急性期と在宅の橋渡し役となる地域包括ケア病棟。同病棟に転換しうる病棟は、急性期から療養までと幅広いため、多くの病院関係者から注目を集めています。しかしリハビリの包括払いといった今までにない施設基準が設けられ、その運用には頭を抱える関係者も少なくないようです。急性期・療養の両サイドから転換を進める平成医療福祉グループの取り組みについて、代表の武久洋三氏に聞きました。
《今回インタビューにご協力いただいた方》
日本慢性期医療協会 会長
地域包括ケア病棟協会 顧問
平成医療福祉グループ代表/平成博愛会理事長 武久洋三氏
診療報酬を度外視したリハビリも必要
―平成医療福祉グループで地域包括ケア病棟への転換を進めて、経営上の変化はありますか。
武久氏
療養病棟から転換して地域包括ケア病棟入院料1を算定した病院は明らかな増収になっています。診療報酬の単価は、リハビリだけで見たら療養病棟の方が高いですが、入院基本料などを含めた全体では地域包括ケア病棟の方が高くなりますから。
武久氏
地域包括ケア病棟のリハビリは包括払いで、1日平均2単位以上の実施が求められます。そのため、施設基準の2単位だけは確実に行い、あとは単位を気にせず「必要なことを必要なだけする」という方針で運用しています。
ただ、こうした報酬算定には課題も感じています。そもそも、1回で「20分以上」の「1対1のリハビリ」を提供しなければ1単位と認められず、診療報酬はいただけません。この要件がアウトカムを最大化させる上で、足かせになることもあります。
たとえば、患者のADLが向上するにつれ、服を着たりトイレに行ったりといった、20分もかからないような日常生活の訓練がとても重要になっていきます。このほか、認知症患者のリハビリなど、集団で行った方が効果的な場面もあるものの、先ほどの要件に当てはめてしまうと、こうしたケアは1単位として認められません。
患者本位のリハビリをするためには、ある程度診療報酬を度外視せざるを得ないのが、現状だと思います。
地域でクチコミが生まれるリハビリを
―患者の反応はいかがですか。
武久氏
地域からの評判は高まっているように思います。
たとえば、50歳代半ばの男性患者は、話がしたくても呂律が回らない状態でした。スタッフたちの「この人を社会復帰させたい」という強い気持ちを見て、わたしも「包括払いであることを気にせず、思う存分、必要だと思うことをやって欲しい」と現場に伝えました。そうすると、リハビリを始めて3か月で、患者が挨拶の受け答えもしっかりできるようになったのです。
こうした実績が積み重なって、地域における信頼が高まっていくのを実感します。“地域”包括ケアですから、地域の中での評判が重要です。遠方から患者が来ることは考えにくい。きっちり成果を出して、それが地域でクチコミとして広まれば、自然と患者が集まることになる。医療として、正しい姿になっていると思いますね。
―集患に繋がるというお話ですが、収支面ではいかがでしょうか。一見、コストがかさんでしまうように思えます。
武久氏
地域包括ケア病棟単体での利益率は8%ほどで、特別問題は出ていません。もちろん、わたしたちなりに試行錯誤しての結果ですが、今のところ地域包括ケア病棟の収入は上向いています。
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