著者:野末睦(あい太田クリニック院長)
質問:医師として成長し続けるためには、どんな心構えを持っているべきでしょうか?
※編注:質問に対する「私的結論」を次回掲載します。
医師の職業人生を10年ごとに区切り、起承転結を考えてみるといろいろなことが見えてきます。それぞれの節目にどんなことに取り組めば、医師として成長し続けられるかを考えたいと思います。
医師としてトップランナーになるまで
医師人生がスタートして最初の10年、「起」に当たるこの時期は、先輩医師からや同僚、メディカルスタッフから、とても多くのことを学び、行動していきます。この時期は素直に学んだことを身に付けていくことが必要でしょう。
そして、「承」にあたる次の10年は、それまでに身に付けた知識、技術をもとに、自分自身で考える。あるいは、その分野でのトップランナーを自分で探して学び、自分自身がトップランナーになり、活躍する時期と言えるでしょう。
そして「転」にあたる次の10年は、リーダーとなってトップランナーとしての経験をほかの人のために役立てていく時期ではないでしょうか。例えば各科の部長となって、診療科としてのチームをつくり、多くの患者さんの治療にあたるとともに、後輩医師を育てる、あるいは人によっては大学の教授になって、より大きなチームを率いていく人も出てくると思います。この時期に開業をして独立していく医師も多いと思います。
誰も教えてくれない21年目以降 孤独の中でどうキャリアを切り拓くか?
わたしは、縁があってちょうどこの「転」の時期に病院長になりました。そしてこの「転」の時期こそ、意識して自己学習すべきではないかと考えています。
医師人生最初の20年間は、ある程度学ぶことを強制されるので、ほとんどの医師が必死に勉強します、ただその範囲は、自分の専門領域に偏ってしまいがちです。医師として身に付けることが膨大なものであることなど考えると、それも致し方ないでしょう。
しかし、医師として30年目以降の「転」の時期になると状況は一変します。まず、自分の専門領域で高いステータスに到達しています。学ぶことを強制されず、何も学ばなくてもしばらくは通用します。そして通用しなくなっても、周囲の人は忠告してくれないのです。開業した場合なども、学ぶべきことが山ほどあるにもかかわらず、それを親切に教えてくれる人は、ほとんどいません。誰かに何かを教わろうと思うのであれば、お金を払うなどして機会を自分からつくらなければならなくなるのです。
いずれにしても、それまでと違って、能動的に、貪欲に、そして自分自身の頭で考えながら学んでいく必要があります。そして、孤独になっていきます。なぜなら、ポジションを争ったり、リーダーになったり、開業したり、これらどれをとっても、仲良しこよしではうまくいかなくなることだからです。
野末睦(のずえ・むつみ)
筑波大学医学専門学群卒。外科、創傷ケア、総合診療などの分野で臨床医として活動。約12年間にわたって庄内余目病院院長を務め、2014年10月からあい太田クリニック(群馬県太田市)院長。
著書に『外反母趾や胼胝、水虫を軽く見てはいませんか!』(オフィス蔵)『こんなふうに臨床研修病院を選んでみよう!楽しく、豊かな、キャリアを見据えて』(Kindle版)『院長のファーストステップ』(同)など。