医療機関からの情報発信、取り組むべきは「いま」―病院マーケティング新時代(1)<社会医学の視点から>

本連載について
人口減少や医療費抑制政策により、病院は統廃合の時代を迎えています。生き残りをかけた病院経営において、マーケティングはますます重要なものに。本連載では、病院マーケティングサミットJAPANの中核メンバー陣がリレー形式で、集患・採用・地域連携に活用できるマーケティングや広報について解説します。
著者:小山晃英(こやま・てるひで)/病院マーケティングサミットJAPAN Academic Director
京都府立医科大学 地域保健医療疫学
京都府立医科大学附属脳・血管系老化研究センター 社会医学・人文科学部門

医療機関と社会環境要因を識る

現在の医学研究の多くは遺伝と生活習慣を考慮し、疾病の有無で健康か否かを判断すること、すなわち個人をみることがほとんどです。わたしが専攻する社会医学の考え方では遺伝と生活習慣だけではなく、「家庭環境+社会環境+時代背景」など多様な因子が健康に影響していると考慮します。

この観点を医療機関に当てはめると、医療関係者が院内の取り組みを考える機会はあっても、その医療機関が置かれている環境について考慮することは少ないと気付きます。そもそも医療業界においては、医療者側が強者で、利用者側が弱者という構図が古くからありました。一方、近年の情報爆発社会では利用者側が情報を得やすくなり、医療機関を選べる時代となりました。

さらには、人口が増える見込みのない情勢の日本では、組織の上昇スパイラルをともに作り出せる仲間(勤務者)を得るのが難しい時代だということは自明の理です。実際に、2000年には8600万人いた生産年齢人口(15-64歳)が、2060年までに4400万人と、ほぼ半減することが推計されています(平成28年版高齢社会白書)。この時代に生き残り、選ばれる医療機関になるためには、社会情勢と医療機関を取り巻く環境まで考慮することが必要でしょう。

医療機関の情報発信の現状

社会医学は、時代背景まで考慮するものです。2015年は、第4次産業革命元年といわれていますが、スマートフォンが普及した現在、情報へのアクセスには壁がなくなりました。

総務省の平成27年度版情報通信白書では、情報収集を行う手段にwebを用いる人は世代に関係なく8割近くに及ぶことが報告されています。

情報収集を行う際の手段(年代別)
出典:総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への人々の意識に関する調査研究」(平成27年)

医療や健康に関する情報もwebから取得する人が多く、2017年12月にGoogleが日本語検索におけるページの評価方法をアップデートしました。これは、医療や健康に関する検索結果の改善を意図したもので、医療機関等から提供される情報は信頼性が高いとされ、検索結果の上位に表示されるようになっています。一方、医療機関から行き過ぎた表現が発信されないように、2018年6月には医療広告ガイドラインが策定されました。これらの時代背景から、医療関係者が医療や健康に関する情報を発信することは、生活者に対する義務の時代になったとも言えるでしょう。

医療機関からの情報発信は、選ばれるために必要なツールでもあります。情報発信の内容と仕掛け次第で、医療機関が求職者、生活者や患者さんに受け入れられ、さらには院内スタッフも含めてファンができる可能性があるからです。とはいえ、医療機関が情報発信をするときには、それぞれの特色により、どの部分で勝負するか、誰に向けて仕掛けるかは異なりますから、今はまさに医療広報を再考する時です。

本連載は『病院経営事例集』に掲載されるということで、医療関係者や広報担当者の参考になる内容を盛りだくさんにしていきたいと思います。また次回も、ご期待ください。

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