病院のアレ、じつは日本独特の文化だった?─建築家が語る病院の裏側vol.4

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病院の設計には、その国独自の価値観や文化が色濃く現れるのをご存知でしょうか。中には「こんなところに?」と思うような意外な場所に国民性が垣間見えることも。今回は、日本独特の病院建築についてご紹介したいと思います。

会計に表れる、お国柄


日本では、すべての診察や検査、処置などが終わってから受付に戻ってきて会計を行うのが一般的です。私たちがごく当たり前だと思っているこの習慣、実は海外では当たり前ではありません。

たとえば、韓国のある病院では、すべての診察室の前にスタッフ用の情報端末があります。再診の場合、直接診察室に行って、そこで受付・会計計算・次回の予約まで行えるのです。また中国では、なにか処置を終える度にお金を支払うシステムをとっている病院もあります。外来で診察を受けたらそこで診察代を支払う、次にレントゲンを撮ったらそこでレントゲン代を支払う……というように、一回の診療で何度も清算をすることになるため、各スペースにちゃんと会計が設けられているのが特徴です。一見合理的でないように思えますが、未収金対策には効果が高いとのこと。日本の病院で最後に一括して会計ができるのは、「日本の患者は治療費ちゃんと支払ってくれる」という前提があるからこそ成り立っているとも言えそうです。

病室の扉も日本ならでは

病室の扉にも、日本独特の文化が見られます。あまりにも普及しているので気にされたことはないかもしれませんが、日本では多くの場合、外来や病室の扉が引き戸となっています。しかし、引き戸を採用している病院は海外ではほとんどありません。

もともと日本の病院に引き戸が普及したのは、ある設計事務所が提案して製品化したのがきっかけだとされています。引き戸は遮音性が弱いのが難点で、遮音性を高めようとすると今度は扉が重くなり、壊れやすくなってしまう。かといって開き戸にするとストレッチャーの搬入などが大変になるほか、車椅子の人が自分で扉を開けることができません。双方に長短があるのですが、コストよりも患者さんの使いやすさに重きを置く日本の医療現場では、引き戸のほうが馴染みやすかった、とも言えるかもしれません。

イスラム圏では、男女で空間が分かれている


文化の違いが出やすい場所は、この他にもあります。その代表例が、“死にまつわる場所”の扱われ方です。たとえば韓国の病院では、敷地内に葬儀場があり、病院内で葬儀が執り行われることが珍しくありません。日本では、まずあり得ませんが、これも文化の違いと言えるでしょう。一方でブータンには、霊安室がない病院もある。チベット仏教の考えでは、病院内に死体は存在してはいけないそうです。実際には身寄りのない人もいるので、空き部屋にご遺体を保管するための冷蔵庫を置いているそうですが、「霊安室」という名前の部屋は存在しないのです。

死にまつわる部分ではありませんが、宗教観の違いから日本とは著しく異なる病院建築を取り入れているのが、イスラム圏の医療機関です。イスラム教徒は一般的に、身内以外の男女の接触は制限されていますよね。そのため病院も、すべての空間が男女別で入り口から受診して帰るまで、動線も別々に分けられているのです。ですから、内科も2つ、外科も2つ。あらゆる空間が2倍必要になります。当然職員や医師も男性専用のスタッフと女性専用のスタッフがいるので、2つの病院があるようなもの、とも言えるでしょう。このように宗教文化の違いは、病院にも色濃く反映されています。

日本の病院がきれいなのは…


文化や宗教のほか、医療制度の違いも病院建築に反映されます。たとえば、日本の病院は、基本的にどこも一律に設備が整っており、きれいだと思います。一方ほかの海外諸国の病院はどうかというと――必ずしも、そうではありません。もちろん、富裕層が利用するような医療機関は当然清掃も行き届いていますし、建物としても美しいのですが、ボランティアベースで運営されているような医療機関は、何十年も前に建てられたまま改築されず、ひどく傷んでしまっていることが珍しくない。つまり、医療機関ごとに設備にばらつきが大きいのです。日本の医療機関が一様にきれいなのは、国民皆保険制度があるからだと私は思います。
どの医療施設に行ってもきれいで一定の質が担保されているというのは日本ならではのことであり、海外の人が見学に来ると皆さん感心されます。

光を大切にするのは日本人の文化

海外の建築家が日本の病院を見て驚くポイントの一つに、「病棟の明るさ」が挙げられます。特にヨーロッパの病院は、外見は美しくても、中に入ると思いの外暗いことが多い。これは、窓の面積などの基準が違うからです。日本では、床面積に対する採光面積の割合、つまり窓の大きさが建築基準法で定められており、病院や学校はとくに環境を良くすることが求められます。日本の病棟は、なるべく南側に位置するように設計されていますし、玄関も南側にあります。北側に玄関を設計する病院はほとんどありません。

実はここにも、日本独特の文化が垣間見えます。病院に限らず、日本人は南からの光をとても重視する傾向がある。「リビングは南面採光がいい」なんて言うのは、日本人くらいなのです。これは、恐らく地理的な条件に起因しているのでしょう。日本よりも南にある国では、南面採光だと光が入りすぎて暑いのでむしろ避けられています。一方で日本よりも北に行くと、もともと光が弱く北面だろうと南面だろうとあまり大きな違いがないため、そこまで気にしないようです。

このように、病院建築には随所にその国独自の文化が反映されているのです。読者の皆さんが働いている病院の建物にも、実はあらゆるところに日本人ならではの考え方や思想が息づいています。そんな“お国柄”に注目して病院を見てみるのもおもしろいのではないでしょうか。

<編集:角田歩樹>

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