「院長を出せ」「事務長を出せ」と患者さんから言われることは、現場勤務の方なら一度や二度…場合によっては数多く経験されているかもしれません。わたしは外来受付の責任者だったこともあり、何度も経験しました。
ちょっとした苦情・ご意見の多くは「待ち時間が長い」といった、患者さんに対して申し訳ないお気持ちになる内容です。とはいえ、他の患者さんとの兼ね合いなど病院側の事情もありますから、そこは誠心誠意ご説明すれば、まずご納得いただけます。
ただ、一部にはクセの強いケースもあります。極端な例だと、精神科病院に赴任直後、医事課長から「自分の身を守ることを考えて行動を」と注意を受けたのが衝撃でした。実際、「今から包丁持っていく」という電話が入ったこともあります。幸い、電話主らしき人物は姿を現しませんでしたが、当時は殺傷事件がニュースを賑わせていたこともあり、終業時間まで緊張の糸が切れなかったのを覚えています。
患者さん同士のトラブルもあります。あるときは、警備の方と協力して制止に入ることもありました。警備員との連携は、医療現場において“多職種連携”の一つでもあります。実際、対応を誤ればご本人方や周囲の方々の安全にも関わります。
クセの強い患者さんに「院長を出せ」と言われたら、どうしますか?
みなさんが大事にしているポイントはありますか?
わたしは「粘り強く対応しながらも、立ち位置はブレずにいること」が大事だと感じました。
「院長を出せ」と言われても、大抵は感情が高ぶっているために咄嗟に出ている言葉ですから、現場レベルで粘り強くお相手します。まずは現場職員で一次対応をして、事の収まる気配がなければ職員に一度戻ってもらい、わたしと作戦会議。職員に再度対応してもらいます。
それでもダメならわたしが出ていき、じっくりとお話を聞くことにします。これですべて丸く収まる…と言いたいところですが、それでもご納得いただけなければ、一つ上の役職(わたしの場合は係長でした)に登場をお願いします。
対応する間、お詫びすることも多々ありますが、立ち位置がブレないように、決して曖昧にはお詫びしません。相手のお気持ちや、こちらの手際の悪さについてピンポイントでします。たとえば「〇〇についてご不快な思いをさせてしまい、大変申し訳ございません」といった風に。そうしてお相手の感情がクールダウンしてきた頃に話を進めます。
特に序盤で曖昧に謝罪してしまうと、後々「謝ったじゃないか」と言われ、こじれてしまいがちです。なんでも謝り倒すのでなく、けんか腰になるのでもなく、相手の気持ちに真摯に向き合っていると、大抵の方は次第に刀をおさめてくださいました。
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