病院事務職キャリア相談室vol.17: Uターン転職を検討中…年収・やりがいの希望はかなう?

総務課管理職Kさん

40歳、男性、病院事務職歴18年

大学時代に関東に移り住み、そのまま関東の医療機関に就職しました。何度か病院を移りましたが、今後も定年まで医療機関で勤め上げたいと考えています。

ただ、両親のことや子どもたちの生活環境を考えると、私か妻の実家近くへ転居した方が良いのでは、と思い始めました。とはいえ、地元の求人情報などもチェックしてみたのですが、医療機関自体が少なく、給与も現職と同水準とはいかないのかなと思っております。

妻も働けるので条件面はある程度は柔軟に考えるとして、もう一つ、懸念しているのが「やりがい」です。
今はグループ病院に勤めていることもあり、様々な規模・形態の病院の情報をもとに企画や意見交流を行えます。また、病床転換や新規開設、病床縮小といったプロジェクトも活発です。地方にはグループ病院が少ない印象ですが、現職のような環境・働き方を期待することは難しいのでしょうか。すぐの転職というわけではないので、Uターン・Iターンの転職事例や地方ならではの転職事情など、可能な範囲で教えていただけたらと思います。

【回答者】雪竹舞子(事務職専門コンサルタント)

医療事務職キャリア相談室
ご質問ありがとうございます。育児や教育、介護などをきっかけに転居を検討なさっている、というご相談は少なくありません。他にも、ご自身の趣味やプライベートを充実させるため「心機一転、新しい地へ」という方もいます。今回は、地方への転居を伴う転職について、事例も交え解説いたします。

地方の転職事情…どのような働き方が可能?

まず、求人数について。たしかに都市部、特に東京近郊の一都三県に比べると地方の案件は少ないです。そもそも病院が少ないことに加え、正社員として長期で働ける医療機関の人気が高く欠員が出にくい環境というのもあるかもしれません。

ただ、やりがいを得られる可能性は十分にあります。最近は、勢いのある地方病院が買収を進め事業を拡大したり、他のエリアに進出したりという話も増えています。そうした拡大中の法人では、様々なプロジェクトに携わったり業務の幅を広げたりという働き方もかないやすいでしょう。たとえば、買収や新規立ち上げ後は経営を安定させる手腕が求められますし、地域の特性をうまく掴んで根づかせていく戦略も必要です。グループの規模や施設数は現職より縮小するとしても、新たな環境で挑戦するやりがいが得られるかもしれません。また、そうした法人では都市部での勤務経験やグループ病院のノウハウを求めている場合が多いです。Kさんのこれまでのご経験を活かして新たな風を吹き込むこともできるのではないでしょうか。

一方で、規模の小さな法人や施設であっても、やりがいを秘めている可能性があります。たとえば地域で生き残りをかけ改革を図っている医療機関だからこそ、ご自身が中心となり改革を推進できる、という魅力もあるかもしれません。そうした医療機関は、改革プロジェクトをスピーディーに実行できる人材を求めるケースが少なくありません。コンパクトな組織構成ならではの意思決定の速さを活かして、最初から裁量大きく業務に取り組める環境に、やりがいを見出す求職者もいらっしゃいます。

なお、条件面について補足しますと、給与水準は地域によっても異なります。現状維持、あるいはそれ以下の水準になってしまうケースもある一方、地価・家賃・物価なども都市部より低水準になる場合も少なくありませんから、収入と支出の両面を鑑みご検討いただくとよいでしょう。

地方の転職はタイミングも重要

さて、Uターン・Iターンをかなえた方々のお声も交えて、というご希望でしたので、実際にエムスリーキャリアでご相談を受けた事例をご紹介します。

【Case1】「移住したい」という奥様の希望をかなえ転職
政令指定都市で病院の事務長を勤めていた方が、「海の近い穏やかな地方でのんびり暮らしたい」という奥様の希望をふまえ転職。前職で事務長までキャリアアップされていたご実績や、「移住したい」という前向きな動機がプラスとなり、条件面を落とすことなく転職をかなえることができました。特に地方の場合、医療機関同士の関係性が強すぎたり、同規模の病院がなかったりと近隣の医療機関からの採用に苦慮されているケースも。件数は多くはありませんが、そうした医療機関では遠方からの転職を歓迎し、条件面も考慮していただける可能性があります。
【Case2】家族の体調不良を機にUターン転職
都市部のグループ病院で働いていた方が、ご家族が体調不良になられたことをきっかけにUターン転職を検討。民間の総合病院でレセプト業務を経験されていたご経験が高く評価され、地元の公的病院にご入職されました。医事課でしっかりと業務に従事されていたこと、数々の診療科を経験されていたことが決め手となりました。すぐに実家に駆けつけられる安心感が得られた、家族も喜んでくれたとご本人の納得のいく形で転職がかないました。

冒頭でもお伝えしたように、地方では求人の数自体は相対的に少ないため、転職のタイミングも重要です。ご紹介した2つの事例は、時期や求める条件も含め、医療機関側のニーズと求職者側のニーズがちょうど噛み合った好例と言えます。求人は“水物”ですから、タイミングが1週間ずれただけでも、状況が変わっていた可能性はあるでしょう。

Kさんのように転居先は概ね決まっているものの時期は未定、という状況でしたら、該当エリアの求人を常日頃からチェックしつつ、「いい案件があれば」と長い目で見ていただいた方が、理想に近いご転職がかなうかもしれません。いずれにせよ、転居を伴う転職はご家族の生活への影響も大きいですから、ご家庭内でよく相談の上、なにか不安なことや不明な点があればまたお気軽にお問い合わせください。

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雪竹舞子(ゆきたけ・まいこ)
エムスリーキャリア株式会社 経営支援事業部 事務職紹介グループ
大学卒業後、企業にてBtoC営業とセミナー企画・運営に従事。兄弟が先天性の疾患を抱えていたことから、思い入れの強かった医療業界に飛び込むべく、エムスリーキャリアに入社。現在は、前職での営業経験も活かしながら「顧客ファースト」を信念にキャリアコンサルタントとして活動中。趣味はミュージカル・舞台鑑賞で、月1回の鑑賞を欠かさない。

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