倍率・年収は高めを維持する採用市場、コロナ第4波の影響は?―求人天気予報2021年1-3月期

地域によっても大きく異なると言われる、医師の年収や求人倍率。その実態はどのようになっているのでしょうか。今回編集部では2021年1~3月にかけて、m3.comCAREERに寄せられたデータをもとに都道府県と各科の求人倍率と想定下限年収を集計。コロナ禍の影響が採用市場を直撃した2020年度の上半期と比較すると、多くの地域で求人倍率・想定年収(下限)が上昇するなど、徐々に採用市場が活性化しつつある現状が読み取れました。2021年の採用市場の動向と、コンサルタントによる今後の見通しを紹介します。

目次

2021年1~3月の年収相場は“西高東低”

エリア別求人天気予報図
図1:2021年1~3月におけるエリアごとの求人倍率と想定年収(下限)の平均額

2020年の10~12月と2021年1~3月で比較した、エリアごとの動向は上図の通りです。求人倍率は求職者1人あたりの求人数のため、高ければ高いほど、転職先の選択肢が豊富ということを示しています。また、想定年収の下限額の平均値(以下、想定年収)は、医療機関から提示されている最低年収の平均です。実際は、経験やインセンティブによって金額がアップします。

2020年10~12月には想定年収(下限)が増加傾向にあった東日本側は、関東を除き、2021年1~3月にはやや下降傾向に転じました。これに対し、中国、四国、九州・沖縄など、近畿を除く西日本側では想定年収(下限)が増加。いわば“西高東低”の様相を呈しています。なお、想定年収(下限)が下降傾向にあるエリアでも、北海道や中部①②、近畿の下げ幅は数万円となっており、コロナ禍の影響が顕著にみられた2020年度上半期に比べると小さい影響と言えます。医師の採用市場は2020年10月以降、活性化しつつあると言えます。

半数以上の都道府県で求人倍率・想定年収が上昇

続けて、都道府県ごとの傾向を見ていきましょう。

図2:2021年1~3月における都道府県ごとの求人倍率と想定年収(下限)の平均額
※赤字:前回(2020年10~12月)から上昇した項目

一覧からは、求人倍率・想定年収(下限)いずれも、半数以上の都道府県で上昇していることがわかります。

2020年10~12月よりも求人倍率が上昇したのは24自治体、想定年収(下限)が上昇したのは25自治体です。10~12月と異なる傾向としては、想定年収(下限)の上げ幅・下げ幅が小さくなっている点が挙げられます。10~12月には上げ幅が最大で約119万円、下げ幅が最大で24万円だったのに対し、1~3月は上げ幅の最大値が43万円、下げ幅の最大値は80万円となっています。2020年度上半期には多くの都道府県で想定年収(下限)が落ち込みましたが、下半期に入って徐々に上昇傾向に転じ、1~3月にはやや高めの水準で推移しています。

※1 求人倍率・想定年収(下限)ともに上昇した地域
岩手県、宮城県、富山県、三重県、京都府、兵庫県、
鳥取県、島根県、香川県、高知県、宮崎県、沖縄県

※2 求人倍率・想定年収(下限)ともに下降した地域
北海道、秋田県、新潟県、山梨県、静岡県、滋賀県、大阪府、奈良県、和歌山県、熊本県

5領域で想定年収上昇も、診療科によっては再び冷え込み

都道府県別では想定年収(下限)に大きな変動がありませんでしたが、診療科別では大きく変化しています。

図3:2021年1~3月における診療科ごとの求人倍率と想定年収(下限)の平均額
※赤字:前回(2020年10~12月)から上昇した項目

想定年収(下限)の上げ幅は最大でも皮膚科系の12万円と、全体的に上昇幅が小さかったものの、大きく下げる診療科が見られました。特に2020年10~12月の上げ幅が1・2位だった外科系(一般外科)・産婦人科は、一時的な高騰の反動なのか、今期では大きく下げる結果になりました。

内科系(一般内科など)も同様の傾向にあり、急募をしていた医療機関が、年度末を前に充足したことで、提示条件の高騰が収まったことが一因かもしれません。ただし、外科系・内科系ともに求人倍率は大幅に上昇しており、採用の競合施設は増えていると言えます。

4月以降、コロナ第4波が転職市場に与える影響は?

ここまでデータで見てきた医師・医療機関を取り巻く転職市場動向について、エムスリーキャリアで医師の転職支援にあたるコンサルタントに聞きました。

求職者の動向

「例年1~3月は、転職活動中の先生方が4月からの勤務に向けて、入職の意思決定をする傾向にあります。また、2021年1~3月に紹介会社に登録された先生は『いますぐ転職したい』というよりも『納得のいく転職先をじっくり探したい』というご意向の方が多く、2021年度内の転職に向け、情報収集を始める先生が増えている印象です」(医師転職支援コンサルタント)

医療機関の動向

「求職者同様、4月入職を目指して採用活動を行う医療機関が多いため、病院・クリニックともに、求人の条件緩和を行うなどラストスパートをかけていました。

また、引き続きコロナ禍が医療機関の経営状況に影を落としています。たとえば外来患者数が減少した影響で、外来メインのクリニックは募集を停止したり、新規開設を取りやめたりというケースが依然として多いです。

一方で、訪問診療クリニックなどはニーズが変わらず集患が好調なため、積極的な採用を続けています。感染リスクを避けるために在宅医療を希望する医師も増えており、2020年度の弊社経由の入職者数は2019年度に対し134%に伸びています」(前出のコンサルタント)

診療科別の動向

「新しくお預かりする求人数の推移を見ると、10月以降、眼科や耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、小児科、外科系などは減少傾向にあります。特にリハビリテーション科は10~12月の59%にとどまり、大きく減少しています。

これはあくまで推測ですが、新型コロナウイルス感染患者が増加した影響で、急性期病院の稼働率が下がり、リハビリを担当する医療機関への紹介患者数が少なくなっているのかもしれません。結果的に、そうした回復期の医療機関における採用ニーズが低下している可能性があります」(前出のコンサルタント)

2021年4月以降の見通し

「2020年度下半期の採用市場は、それまでコロナ禍による需要の落ち込みから一転し、復調傾向にありました。

しかし、2021年4月以降はコロナ第4波が既に広がりつつあるため、医療機関の採用活動は再び消極的になり、一部の急性期病院や外来クリニックでは採用控えが予想されます。2020年度上半期よりも厳しい落ち込みになるでしょう。

東京都とその周辺県、大阪府、宮城県のような都市部では、採用基準を引き上げるなど“買い手市場”に移行する医療機関が増え、コロナ禍の影響が少ない地域では、引き続き医師の“売り手市場”が続くと思われます」(前出のコンサルタント)

再び活性化しつつあるように見えた医師採用市場ですが、第4波の広がりやワクチン接種の遅れなどにより、再び地域・診療科によっては落ち込みが予想されます。一方で、採用を控える医療機関が増えることで、これまで採用のチャンスが少なかった医療機関にとっては、採用機会が増加するかもしれません。

医師採用を検討する際は、こうした採用市場の動向をいち早くキャッチし、最適なタイミング・条件を見極めることが大切です。医師採用を検討している場合は、他院の求人をチェックしたり、人材紹介へのヒアリングしたりと、情報収集をこまめに行うことをおすすめします。

【調査概要】
2020年10月~2021年3月にm3.comCAREERおよびエムスリーキャリアエージェントに掲載されていた求人約15,000件の情報のほか、エムスリーキャリアの人材紹介サービスに登録している求職者の情報を統計処理

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