採用戦略のキーワードは「間口を広げすぎず狭めすぎない」─1から学ぶ医師採用マニュアル【概要編vol.2:採用戦略・求人票】

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医師採用は売り手市場だからこそ、ターゲット像を明確化することが戦略のキモに。しかし、具体的にどうやって計画や戦略を考えていけばいいのでしょうか。今回は採用のスケジュールや、ターゲット像の設定の仕方、そしてそれを求人票にどう落とし込んでいけばいいのかをご紹介します。

いつやるべき?どのくらい時間がかかる?医師採用の流れ

(1)採用スケジュール

まずは、そもそも医師採用はいつ始めるのが効果的なのか、どのくらい時間がかかるのか、をおさえておきたいと思います。


エムスリーキャリア登録医師数の推移を見てみると、年によって傾向の違いはあるので一概には言えないものの、おおよそ下図の時期に増加傾向にあることがわかります。
その中でも特に、11~1月にかけてが医師の転職の最盛期。次年度の人事も固まってきて、現職の方向性や待遇に希望とのギャップを感じて転職活動を始める医師が多いようです。ただし、この時期には医療機関も次年度に向け採用活動を本格化するシーズン。したがって、求職者も多いが競合も多いということは念頭に置いておきましょう。

医師採用のスケジュールをたてる際の ポイントは、自院が採用したい時期から逆算して採用計画を立てる ことです。エムスリーキャリア登録医師のデータによると、医師が転職サイトに登録してから1~2カ月の間に、コンサルタントから示された候補求人を検討し、登録後3カ月程度で転職が決まるという傾向があります。
たとえば次年度(4月)の採用を考えていて紹介会社を利用する場合、9~10月ごろには自院を医師に提案してもらう必要があります。認知活動にかける時間を加味すると6~7月ごろには採用活動に入った方がよさそう、という風に考えるわけです。

このように転職シーズンは年間数回あるものの、実際には半年に1人常勤医師を採用できたらかなりスムーズに進んだと言えるでしょう。僻地など、条件面に不利な点を抱えている医療機関では1人採用するのに1年以上かけることも珍しくありません。まれに採用活動開始から1~2カ月で内定受諾に至るケースもありますが、たまたまタイミングが合ったなどの偶発的要素が強いので、 しっかり時間をかけて取り組む必要 があります。

採用フロー(流れ)

基本のフロー:事前準備→応募→書類審査→面接(1~2回)→最終調整→内定

フロー自体は、どの採用手法でも大きな違いはありません。法人により対応に差はありますが、医師が多忙であることを考慮して面接は一度のみで、施設見学とセットで行うのが一般的です。採用の過程では、医師の希望や背景に合わせた措置をとるなど柔軟に対応することで密度の濃いマッチングが可能になります。

《医師の希望や背景に合わせた対応例》

◆事例1
・医師の希望:希望通りの手技が行えるのか、スタッフとはうまくやっていけるのか等を確認したい
・医療機関の対応:トライアル勤務を提案し、実際に現場を見て判断してもらう
◆事例2
・医師の希望:遠方在住で転居を伴うため、生活のイメージまで固めたい
・医療機関の対応:施設のみでなく、転居先候補の住宅や買い物の場所など、地域を案内

医療機関の立地が求職者の希望エリア外だったにもかかわらず、オペを見学してもらったことで入職に至ったというケースもあります。紹介会社を利用している場合は、 医師のキャリア志向や意思決定ポイントをヒアリング・整理した上で各種対応 を採用過程の中に差し込めるといいでしょう。

医師採用のフロー中で最も時間がかかるのは、母集団の形成です。医師に興味を持ってもらえる・応募してもらえるよう、求人づくりや認知活動といった地道な事前準備がキモとなります。そうした事前準備を始めるにあたってまずやらなければならないのが、“ターゲット像を明確にする”ことです。

広すぎても狭すぎてもNG…ターゲット像の定め方

概要編vol.1でも述べたように、「誰でもいい」と採用のターゲットを広げすぎると、かえって数多ある求人の中で医師に選んでもらうことは難しくなります。採用したい医師像を踏まえ、そこから求人を組み立てていくことが重要です。一方で「年齢は30代、当直・オンコール対応可能で、専門医を持っていて…」などと要件を狭めすぎると、リーチできる医師が少なくなってしまいます。 ある程度の要件フレームをつくったらあとはなるべく間口を狭めない ようにする、このバランスが大切です。

ポイント:医師に求める最低条件を考える

自院の経営課題から、最低限医師に求める条件を明確にします。
とはいえ、一口に経営課題といっても、短期的なものから中長期的なものまで様々あるでしょう。経営課題の緊急度に応じてターゲット像を絞りこんでいく必要があります。

たとえば、以下のような2つの課題を抱えていた場合。

《医師の希望や背景に合わせた対応例》

◆短期の課題
「急遽欠員が出てしまい、病棟管理に対応できる医師を採用しないと現場の医師がオーバーワークになってしまう」
◆中長期の課題
「自院の医師の平均年齢が50歳以上なので世代交代に備え、当直もできる30代の若手医師がほしい」

両者を一度の採用で解決しようとすると、間口がかなり狭くなってしまうため難しいでしょう。まずは「病棟管理を対応できる医師」を最低条件にして、年齢や当直有無は柔軟に対応できるようにしておけば、可能性はぐんと広がります。

このように、 緊急度の高い課題にはなるべく間口の広い要件設定が必要 です。短期的な課題を解消することができれば、中長期的な課題に取り組む余裕も生まれます。場合によっては、1年間限定勤務(諸事情により、期間限定勤務を希望する医師も一定数います)という形でもとりあえず人員を確保し、その間に次年度の体制整備を進めるなど、ある程度の割り切りが必要になるでしょう。

なお、急性期の機能を担う医療施設では経験を積みたい若手医師が集まりやすい一方で、回復期や慢性期など非急性期ではワークライフバランスを重視する50代以降の医師が集まりやすいなど、病院の機能によってもメインターゲットになる層は異なります。その点もふまえてターゲット像の設定を行うとスムーズでしょう。

医師の心をつかむ求人とは

ターゲット像が明確になったら、対象となる医師に興味をもってもらえそうな求人をつくります。その際、年齢や勤務日数・業務内容の必須条件を細かく提示するなど、医療機関側の主張が強すぎるとマッチングできないことが多いです。一方で、間口は広い方がいいから、と条件を「応相談」ばかりにするのも、求める医師像やその医療機関での働き方がイメージしにくいのでNG。では、医師は求人票のどこを見ているのか、一人でも多くの医師に応募してもらうためにはどんな情報を盛り込めばいいのか。求人票作成のポイントをご紹介します。

ポイント(1):医師が医療機関を選ぶ4つの条件とは

《医師が医療機関を選ぶ4つの条件》
(1)アクセス
(2)ワークライフバランス
(3)キャリア(経験)
(4)報酬

医師が医療機関を選ぶ際には、主にこの4つの条件の中で自分の希望が満たされるかどうか、を判断基準としていることが多いでしょう。しかし、それぞれをどのくらい重視するかは医師によって異なります。 ターゲットとなる医師のキャリア志向や転職の背景、意思決定ポイントを想定・リサーチした上で、それに応じて自院のアピールポイントを求人票に落とし込んでいく ことが大切です。

ポイント(2):項目別、書き方の留意点

アクセス

もし便利な立地であればそのことを明記するのはもちろんですが、一見不利な立地でも、具体的な通勤ルートを明示することで「意外と近い、通勤圏内かも」と医師に思ってもらえることがあります。弱点をフォローできるような情報があれば積極的に求人票に盛り込みましょう。

キャリア

ターゲット像となる医師がどのようなキャリアを求めているのかをふまえ、自院ではどのような形で実現できるのかイメージしやすいように情報を提示しましょう。たとえば年間の手術件数や設備、扱える症例、取得可能な専門医、医師の希望に合わせて柔軟なキャリアパスをとっている実績の有無などが挙げられます。

〈例〉「ターゲット医師のキャリア志向」から訴求ポイントを考える

とはいえ、「アクセス」は移転でもしなければ変えられないですし、「キャリア」も設備や担っている機能によって自ずと限定されます。この2点で他院と差別化が難しい場合には、可能な範囲で「ワークライフバランス」「報酬」のいずれかを手厚くするという方法もあります。

ワークライフバランス

ワークライフバランスを売りにするのであれば、福利厚生についてはなるべく細かく求人票に明記できるといいでしょう。たとえば週4日勤務可、当直・オンコールなし、残業は〇時間以内、有休消化実績〇%、女性医師〇人が活躍中、平均勤続年数〇年…といった具合に、実績も併せて書かれていると医師も安心感を持ちやすくなります。

報酬

やはり高収入を望む求職者は多いので、他の条件が圧倒的に不利な場合でも年収が高ければ入職に至るケースは少なくありません。ただし「1000万円~2000万円」のように求人票に書いてある年収の幅が広すぎると、どんな医師に来てほしいのか─たとえば若手を育てたいのか、あるいは指導医レベルの医師を求めているのか─がイメージしづらいです。紹介会社としても医師に提案しにくくなってしまうので、ターゲット像に即して額面を具体的に設定しましょう。

定期的な軌道修正を忘れずに

それでもなかなか医師から問い合わせがこない、もしくは問い合わせが来ても応募に結びつかない、という場合には、 「なぜ来ないのか」をしっかり見極める必要 があります。紹介会社を利用している場合は、医師に断られた理由や問い合わせに結びつかない理由をコンサルタントにヒアリングすることも大事です。このようにして改善ポイントを定期的に探り、ターゲット像や求人内容をブラッシュアップするようにしましょう。

特に紹介会社を利用している場合には、上記のような点に留意して情報をしっかり伝えることが、〝濃い〟求人票をつくると同時に、医師へ提案してみようとコンサルタントに思わせるチャンスにもつながります。次回はそうした認知活動のポイントを詳しく見ていきましょう。

<協力:浅見祐樹、福田拓良/取材・文:角田歩樹>

浅見祐樹(あさみ・ゆうき)
エムスリーキャリア株式会社 経営支援事業部 採用アウトソーシンググループ
法政大学卒業後、事業系NPO法人にて地域活性化や災害救援に従事。「現場が第一」をモットーに、地域ニーズに合わせた事業開発を行う。その後、エムスリーキャリアに入社し、医師採用のコンサルタントとして全国の医療機関を支援。現在は約130社の医師向け紹介会社と連携しながら、医療機関向けの採用支援サービスの開発・推進を担当している。※所属は取材当時
福田拓良(ふくだ・たくろう)
エムスリーキャリア株式会社 経営支援事業部 採用アウトソーシンググループ
早稲田大学卒業後、金融機関にて法人・個人向け融資、投資商品の営業活動に従事。エムスリーキャリアに入社後は、医師採用のコンサルタントとして全国の医療機関を支援。現在は採用アウトソーシングサービスのチームリーダーとして、メンバーのマネジメントを行いつつ、採用支援サービスの開発・推進を担当。※所属は取材当時
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