地域医療係数とは?整理された体制評価指数への考え方【DPC改定2018(5)】―診療報酬請求最前線

診療報酬請求最前線
前回はDPC制度の改正点について、機能評価係数IIの「保険診療係数」を解説しました。今回は「地域医療係数」について解説します。

地域医療係数とは

地域医療係数はその名の通り、地域医療への貢献度を評価する係数で、その設定手法としては、個々の病院の患者数といった数値を相対評価できるように指数化し、上限下限の設定を行った上で係数に置き換える統計処理が行われています。地域医療係数の係数処理は、基本的に医療機関群の範囲(グループ)内で集計され、係数への置き換えが行われています。柔道やボクシングでいうところの階級別の考え方です。

さらにこの地域医療係数は、評価対象エリアを大学病院本院群(旧I群)と特定病院群(旧II群)は3次医療圏、標準病院群(旧III群)は2次医療圏としています。医療圏とは「都道府県の医療計画の中で、病院および診療所の病床の整備を図るべき地域的単位の区分」を行政側が定めた単位です。よく、地域医療構想の調整会議などで「医療圏はそもそも行政サイドが勝手に区切ったもので、地域医療はその圏域の認識はない」という意見が聞こえてくるように、ある意味、医療計画のために便宜上、線を引いた区分と言えるのかもしれません。

2次医療圏・・・一体の区域として病院等における入院に係る医療を提供することが相当である単位として設定。
3次医療圏・・・都道府県ごとに1つ(北海道のみ6医療圏)。都道府県の区域を単位として設定。ただし、都道府県の区域が著しく広いこと、その他特別な事情があるときは、複数の区域または都道府県をまたがる区域を設定。

地域医療係数は、その地域への貢献度を「体制評価指数」と「定量評価指数」という2種類の大項目に分けて評価しています。

中央社会保険医療協議会(中医協)の資料から抜粋

体制評価指数とは、医療法の5疾病5事業等の急性期入院医療に関する部分を評価したもの。

一方、定量評価指数は地域における患者のシェア状況のことで「当該医療機関の所属地域における担当患者数/当該医療機関の所属地域における発生患者数」で求められ、その対象は年齢(15歳未満の小児と、それ以外)によって区分されています。このように地域医療係数の指数を算出する評価方法を改めて考えてみると、地域の人口(都心と地方)にかなり影響される係数だとわかります。特に都心では患者が多い分、医療機関数も多いので、この係数を上げるのは容易ではないことはすぐにわかります。

新しくなった体制評価指数

後半は、細かく指数評価が設定されている「体制評価指数」について見てみましょう。2018年度から体制評価指数は9項目で構成され、各々にポイント換算するための条件項目が設定されています(指数値の上限値は、大学病院本院群・DPC特定病院群は8点、DPC標準病院群は6点)。詳しくは下表でご確認ください。

2018年度に改定された地域医療係数

2018年度に改定された地域医療係数(中医協の資料から抜粋)

体制評価指数の各項目

体制評価指数の各項目(Pは点数)(厚生労働省保険局医療課資料より抜粋)

体制評価指数の各項目

体制評価指数の各項目(Pは点数)(厚生労働省保険局医療課資料より抜粋)

例えば、地域のがん診療に対する貢献度を実績評価する項目。これは、『「B005-6がん治療連携計画策定料」を算定した患者数/医療資源病名が悪性腫瘍に関連する病名である患者数』の計算式で算出されます。

この「がん治療連携計画策定料」は医学管理料のひとつで、その趣旨は、がん拠点病院が地域連携パスを策定し、地域の医療機関へ患者を紹介した際に算定できるものです。鍵になるのは、あらかじめ連携パスを作ることや医療レベル的に連携できる診療所との関係づくり。しかし、がん患者が治療途中での転院を望まないことや診療所の医師の専門性や技量といった部分で、なかなか進展しない場面が多々見られます。

一方で、指数を上げるために扱う件数は極めて少なく、年間2桁の実績があればクリアできるほどになっています。そう考えると、自院を退職して開業したがん治療の先生同士で、連携関係を構築すれば、この項目の達成はそれほど難しくないでしょう。

このように、それぞれの指数に設けられた実績を地道に紐解いていくことが、地域医療指数の対策につながるのではないかと筆者は思います。算定や施設基準のレベルまで落とし込み、今後の対策を打ちましょう。

【著者プロフィール】須貝和則(すがい・かずのり)
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター医事管理課長/診療情報管理室長、国際医療福祉大学院 診療情報管理学修士。1987年、財団法人癌研究会附属病院に入職後、大学病院や民間病院グループを経て現職。その間、診療情報管理士、診療情報管理士指導者などを取得。現在、日本診療情報管理士会副会長、日本診療情報管理学会理事、医師事務作業補助者コース小委員会 委員長などを務める。

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