診療報酬改定について、今回はその範囲が拡大している「データ提出加算」について解説します。
2018年改定では、回復期リハや療養でも要件化
データ提出加算の届出が要件設定される入院基本料等は、次期改定でも対象範囲が拡大しています。過去を振り返ってみても改定ごとに内容が見直されており、常に対象の拡大や調査項目の増加がみられます。
この動きは、標準化された診療報酬関連データの有用性が評価され、その利活用が進んでいることを意味していますが、情報を活用するがゆえに精度の課題が見つかっており、データ提出に関わる精度管理は年々厳しくなっています。それゆえ、医療現場ではエラーチェックの修正に苦労しているのです。
データ提出加算は、加算1(入院患者にかかるデータ提出)と加算2(入院患者にかかるデータに加え、外来患者にかかるデータも提出)に分かれており、さらに施設規模(許可病床200床)で2区分が設定されていますが、小規模な200床未満の病院の配点の方が大きくなっています。
これは、小規模な病院における情報管理推進の遅れに配慮しているためです。次期改定では各項目とも30点が増点され、さらに充実させる勢いがみられるので、施設整備や診療情報管理体制の整備を求めていることと思われます。
データ重視の傾向は他にも見られ、新項目「提出データ評価加算20点」がそれを裏付けています。この加算は、データ提出加算2の届出を行っていることを条件に「DPCデータの様式1及び外来EFファイル、及び診療報酬明細書のそれぞれに記載された傷病名コードの総数に対する未コード化傷病名の割合が全て1割未満であること」、「データ提出を行う過去6か月の間に遅延等がないこと」が施設基準になっています。すでに機能評価係数IIの保険診療指数には、不適切な未コード化傷病名の使用割合をペナルティとしてマイナス評価した係数が設定されています(※)が、こちらは入院患者を対象とした様式1に限定しています。一方、この加算は、外来レセプトに用いられている不適切な傷病名の使用を是正させることが狙いです。(※参考:『保険診療係数が大幅改定、そのポイントと理由【DPC改定2018(4)】』)
未コード化傷病名とは?低率使用を評価するわけ
では、不適切な未コード化傷病名とは、何を指しているのでしょうか。いわゆるワープロ病名という表現が用いられていますが、簡単に言えば、保険請求に用いることが認められる傷病名(標準病名)以外の独自病名を指します。認可されている病名には管理番号が付与されているため、番号が無い病名を「未コード化傷病名」と呼んでいるのです。ただし、ここで注意したいのは、標準病名は3ヶ月おきに更新され、廃止される病名が出ていること。この廃止病名で登録された患者には、該当病名を更新して登録し直さなければならないのですが、この作業がなかなか大変です。
この外来レセプトに用いる傷病名がターゲットに設定された背景には、医事の保険請求のために登録される傷病名が、医師が用いる電子カルテの病名とは別に存在していることが挙げられます。医事システムの中だけで管理されている傷病名(レセプト病名)の運用や標準病名更新の未対応が改善されないために、データ活用時や肝心なレセプト審査でも障害になっていると推測できます。傷病名は、医師が検査や治療の際に適応するものを判断・登録するのが原則ではありますが、現状、医事の保険請求に係る部分だけが切り離され、別作業になった弊害が現れ始めているのではないかと筆者は思います。
今回の加算で、未コード化傷病名の使用割合(1割未満が目安)がどの程度になるものか試算してみたところ、当院は7.8%程度に収まりました。読者の皆さんも試算してほしいと思いますが、これまでのEFファイルには傷病名の項目はありませんので、ベンダーに相談するなど別途データ加工が必要になるでしょう。
注)今改定のデータ提出加算では、外来EFファイルにおける未コード化傷病名の割合が要件化されましたが、2019年3月分のデータまでは経過措置が設けられています。
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・【診療報酬請求最前線vol.18】2018年度改定「入院医療」のポイントはデータ提出加算
・「7対1」の名称は消滅の公算! 入院評価体系の抜本見直しは必然 人員の不均衡は解消されるのか―医療ニュースの背景が分かる
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター医事管理課長/診療情報管理室長、国際医療福祉大学院 診療情報管理学修士。1987年、財団法人癌研究会附属病院に入職後、大学病院や民間病院グループを経て現職。その間、診療情報管理士、診療情報管理士指導者などを取得。現在、日本診療情報管理士会副会長、日本診療情報管理学会理事、医師事務作業補助者コース小委員会 委員長などを務める。
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