診療情報提供料(Ⅰ)、つまり診療情報提供書の算定に関わる診療報酬は250点で収益性も高いことから、どこの医療機関でも注目しています。しかし算定要件や加算が多岐にわたるため、全体を理解して算定漏れなく紹介を行っていくのは容易ではありません。今回は、医学管理料の代表格とも言える診療情報提供料について考えます。
高点数だが情報提供先などは算定要件で指定
診療情報提供料(Ⅰ)は、医療機関同士の有機的な連携の強化と、医療と介護・福祉相互の情報共有、そして医療と介護の継続性に視点を置いた広範囲な情報共有を目的に設定されています。
古くからある医学管理料の1つですが、いわゆる“医療・介護の連携”や“医療機関の機能分化”という昨今の医療体制の方向性にもマッチしており、今後も重要な意味を持つと言えるでしょう。
この診療情報提供料(Ⅰ)は、患者一人の情報提供に対して月1回250点を算定できますが、実は提供先と目的については算定要件で明確に指定されているのです。例えば、以下のようなものです。
- (注2)居宅の市町村や保健所などへの保健福祉ザービス申請
- (注3)在宅患者訪問薬剤管理指導のための保険薬局への情報提供
- (注4)精神障害施設・介護老人保険施設・介護医務院などに入所している方々への施設への情報提供
- (注5)省略
- (注6)認知症の鑑別や治療方針を立てる際の情報として認知症専門保険医療機関への情報提供
- (注7)~(注16)省略
10種類にのぼる注加算
算定内容を見ていくと、診療情報提供料(Ⅰ)には、より具体的に診療内容を絞った連携や医学管理に対応するための情報提供について、加算点数が10種類も設定されています。
注7で規定されている加算では、診療情報提供書に検査結果(心電図、脳波の所見と退院後の治療計画など)といった情報を付帯させることによって200点を算定できます。また、詳細は後述しますが、注16には退院を含めて紹介時の提供情報をデジタルに閲覧できるよう整える(検査結果、画像情報、画像診断所見、投薬・注射情報、退院時要約などを提供/添付する)と退院時には200点、入院中には30点が算定できる「検査・画像情報提供加算」もあります。
また、他の関連施設と共同で医療を行う場合などにも加算が設定されています。例えば、合併症を伴ったハイリスク妊産婦の入院に際し、紹介元医師が入院中の病院に赴いて医学管理を行うと、紹介元は「ハイリスク妊産婦共同管理料(Ⅰ)」を算定できますが、情報提供(紹介)そのものに対しても「ハイリスク妊婦紹介加算(注8);200点(妊娠中1回)」が用意されています。
2018年度の診療報酬改定でも注目が集まっていた医科・歯科連携の関連からは、「歯科医療連携加算(注13);100点」があります。がんの治療中など一定の疾患にかかって口腔衛生が必要な場合に、口腔管理を目的に歯科への紹介を行った際に算定可能となっています。
他にも、以下のようなものがあります。
- (注8)ハイリスク妊婦紹介加算;200点(妊娠中1回) ※再掲
- (注9)認知症専門医療機関紹介加算;50点
注6にある認知症専門医療機関への鑑別診断等のための紹介に加算 - (注10)認知症専門医療機関連携加算;50点
認知症と診断されている患者の認知症悪化が見られた場合、その状況を報告した際の情報提供に加算 - (注11)精神科医療連携加算;200点
精神科を有しない医療機関において、他の精神科受診の診療予約調整を行った時の情報提供に加算 - (注12)肝炎インターフェロン治療連携加算;100点
インターフェロン治療のために肝炎患者を専門的な医療機関に紹介することに加算 - (注13)歯科医療連携加算;100点 ※再掲
- (注14)地域連携診療計画加算 ※後掲
- (注15)療養情報提供加算 ※後掲
- (注16)検査・画像情報提供加算;退院患者200点、外来30点 ※後掲
診療情報提供料に付帯する加算もあります。
「地域連携診療計画加算(注14);50点」は、A246入退院支援加算(注4;地域連携診療計画加算)のいわゆる“地域連携パス”を使用して患者が退院・転院した後、患者の通院している外来に対して情報提供(退院から翌月まで)することで算定できます。
「療養情報提供加算(注15);50点」は、上記の算定できるケース注4にあるような連携における加算です。在宅医療を担う医療機関が介護施設に対し、訪問看護ステーションから得た情報を添付して情報提供した際に算定可能です。
そして、これら加算の最後には、前述した「検査・画像情報提供加算(注16);退院する患者に退院日の属する月又は翌月200点、入院中の患者以外の患者(外来)30点」があります。これは診療情報提供に必要な検査情報や画像情報、投薬・注射情報、退院時サマリー(要約)等の診療情報をデジタルな方法で共有した場合に算定できます。
注16 別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関が、患者の紹介を行う際に、検査結果、画像情報、画像診断の所見、投薬内容、注射内容、退院時要約等の診療記録のうち主要なものについて、他の保険医療機関に対し、電子的方法により閲覧可能な形式で提供した場合又は電子的に送受される診療情報提供書に添付した場合に、検査・画像情報提供加算として、次に掲げる点数をそれぞれ所定点数に加算する。ただし、イについては、注7に規定する加算を算定する場合は算定しない。
イ 退院する患者について、当該患者の退院日の属する月又はその翌月に、必要な情報を提供した場合200点
ロ 入院中の患者以外の患者について、必要な情報を提供した場合30点
検査結果や画像診断を電子媒体で提供する医療機関も少なくないので、注16は、注7の情報をDVDなどで提供するといった場合と同様に見えますが、異なるものです。注16は電子的な送受信と閲覧のできるネットワークが構築され、情報システムの安全管理を整備していることが施設基準として定められており、強固な地域医療ネットワークが必須となります。この点は、医療情報システムにかかわることですので、技術的な問題が先行するのかもしれません。
当然、注7と注16イは同時算定ができませんが、医事算定として注目する点は、その共通点と相違点です。共通点は、どちらの注も退院のタイミングで算定できるのは200点と、同じ配点になっていること(注7は退院後6ヶ月間に1回)。相違点としては、注16には「入院中の患者以外の患者について30点」という規定もあり、例えば外来時の紹介を想定した情報共有については特別な制限が特にありません。いわゆる先進的な地域医療ネットワークが構築されている地域の医療機関は注目する部分です。
適正算定のための注意点:個別指導と算定体制
これら全てが診療情報提供書の算定に関わる概要と詳細項目です。冒頭で触れた通り、全体像を理解して算定漏れなく紹介を行っていくのは大変なことですが、収益性が高く、積極的な算定が求められます。
それだけに、不適切に算定して過剰な請求を行う可能性もあり、個別指導では厳しく見られるところでもあります。下記にその個別指導の指摘事項を載せましたので、参考にしてください。
- 主治医が自らに対して情報提供したものについて算定している。
- 紹介元医療機関への再受診を伴わない患者紹介の返事について算定している。
- 紹介先の機関名が記載されていない。
- 診療録に提供した文書の写しを添付していない。
また、この診療情報提供料の算定を確実に運用していくために、診療情報提供書を医師事務作業補助者に記載代行させる医療機関も増えています。この場合、しっかりとした教育体制を作り、診療情報提供料の算定を医師任せにするのではなく、医師事務作業補助者が積極的に関与し、確実に算定できるようにサポートさせることがカギになります。そうすれば、情報提供の推進(収益性の向上)、そして適正な算定の両輪をうまく回せるでしょう。
<編集:塚田大輔>
・逆紹介時の診療情報提供料をめぐる不適切な算定―診療報酬請求最前線
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