入退院支援センターの地域連携で忘れたくない視点―診療報酬請求最前線

入退院支援センター、3つの機能

最近、入院・退院のコーディネートを総合的に捉えた「入退院支援センター」を設置する医療機関が増えています。その機能は大きく3つあります。

入退院支援センターの3機能

  1. 前方・後方での地域連携業務
  2. 医療福祉相談や退院支援などの相談業務
  3. 入院・退院のコーディネート業務

地域連携は単なる患者増でない

まず、「1. 前方、後方での地域連携業務」は、従来からの紹介・逆紹介の調整を行う医療連携業務になるわけですが、単に患者数を増やすために診療所との関係や救急患者の確保といった切り口ではなく、自院の立ち位置を明確にして診療体制を整えていく、といった視点が必要になっています。

これはいわゆる機能分化の考え方ですが、患者に支持される「専門性のある医療」とは何かをやはり考えねばなりませんし、地域全体を見渡して自院の役割や連携のあり方も認識する必要があります。そしてこれらを踏まえ、前向きな分析と、それに基づいた中長期の方針を立てることが重要です。

前方連携では目的意識を

前方連携では、なんとなく“連携ニュース”を出したり、なんとなく連携の会を年1回だけ開催したり、なんとなく近隣の開業医を廻って挨拶するようなことではいけません。こちらからは、具体的に求める患者像や提供する医療について、明確なメッセージが必要です。そして、それに応えてくれる医療機関の絞り込みと特別な関係づくり、また一方で、幅広く行う広報活動などは地域医師会との関係づくりを大切にするなど、グリップの効いた活動が重要な意味を持ちます。これは、まさに地域医療構想を視野に入れての戦略になります。

後方連携では患者構成、連携先の精査を

後方連携では、地域医療構想にある4つの区分「高度急性期・急性期・回復期・慢性期」による入院診療分析に基づき、どの段階の患者を確保するのか、他の適切な医療を提供する医療機関にお願いするのであれば、その疾患のどのタイミングとするのか、といった議論が必要です。

わたしの勤務する国立国際医療研究センター病院(781床)でも同様の議論をしています。そして高度急性期と急性期、回復期の入院患者構成において、回復期の割合が多いことを課題にあげ、在院日数の長い診療科の治療を明確にするためにDPCデータの効率性指数の分析を活用しています。DPCデータを用いることで標準的治療期間が明確になり、例えば、長めの効率性指数が見られる整形外科の外科的治療において、術後の経過とリハビリの過程を可視化し、退院前のリハビリ期間を後方連携の医療機関にお任せできないか検討しています。この際、重要な視点は、連携を結ぶ医療機関の医療レベルになります。この事例の場合、整形外科やリハビリの医師の存在が重要であり、そうした医療上の連携ラインを見つけていくことが、今後の取り組みになります。

次回は、入退院支援センターの3機能について、続きを説明していきます。

【著者プロフィール】須貝和則(すがい・かずのり)
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター医事管理課長/診療情報管理室長、国際医療福祉大学院 診療情報管理学修士。1987年、財団法人癌研究会附属病院に入職後、大学病院や民間病院グループを経て現職。その間、診療情報管理士、診療情報管理士指導者などを取得。現在、日本診療情報管理士会副会長、日本診療情報管理学会理事、医師事務作業補助者コース小委員会 委員長などを務める。

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