次世代の育成、どう進めればいい?【ケース編】─病院経営ケーススタディーvol.8

X病院の概要
    1. 病床数:80床(医療療養Ⅰ50床、介護療養30床)
    2. 場所:地方都市(県庁所在地)
    3. 職員数:約150名
    【X病院のその他のケースはこちら】
    【vol.2】経営層の鶴の一声、その判断は正しいのか
    【vol.4】病床転換時の受け入れ患者層の入れ替え、どう進めるべき?
    【vol.6】目線がバラバラの職員たち…事務長がチーム力を高めるには?

組織変革をかけた、中堅職員の育成

組織づくりの重要性に気づいたS事務長は、次の一手に悩んでいた。

X病院では、意思決定を行うのはいつも決まった幹部職員たちであり、会議の準備や決定事項の事務的遂行はS事務長1人が担っている。S事務長の負担感や孤独感は大きかった。 一方、決定事項がS事務長から一方的に言い渡される上意下達の仕組みは、現場職員にとっても経営方針に対する不満や業務・キャリアへの閉塞感につながっていた。また、縦割りの組織風土が浸透した結果、各々が部分最適に陥ってしまい、連携がとりやすいというコンパクトな組織ならではの強みを活かせていなかった。

S事務長は、自分が総務課時代にひたすら受け身で業務をこなしていたこと、医療や病院経営の知見が全くないまま事務長に就任し、四苦八苦している現状をあらためて顧みた。そして、「凝り固まった組織風土の刷新と、次世代の育成に着手しなければ」と決心したのだった。

とはいえ、ベテラン勢の発言権が強いX病院でいきなり若手に「どんどん意見を出して」と言ったところで、あまり効果はないだろう。まずは若手~中堅を中心としたプロジェクトを足掛かりに、徐々にボトムアップの空気を醸成していくのがよさそうだ。

S事務長は、ちょうど、病床再編に伴いパンフレットをリニューアルする必要があることを思い出した。各部署から、次世代のリーダー候補をメンバーに揃えることで、現場の意見を取り入れ、さらに部署間の連携も図ることができるだろう。早速、幹部会議に提案したところ全会一致で決定。プロジェクトメンバーが選定・参集された。

「若手中心のプロジェクトはX病院では前例がない。うまくいくかどうか……」 S事務長の胸中は、期待と不安がないまぜになっていた。

S事務長が選定したプロジェクトメンバー

【設問】
  1. S事務長はプロジェクトのサポーターとして、各メンバーにどのように働きかけるべきでしょうか?

【解説】はこちら

網代祐介(あじろ・ゆうすけ)
社会医療法人社団光仁会 第一病院(東京都葛飾区、一般病床101床(うち、地域包括ケア病床12床)・医療療養病床35床)にて医療福祉連携室室長と経営企画室を兼務。医療ソーシャルワーカー(MSW)として亀田総合病院で経験を積んだ後、医療課題は社会経済、経営、マーケティングの視点からも解決していく重要性を実感し、経営学修士(MBA)を取得。その他、医療経営士1級、介護福祉経営士1級などを取得し、講師業などにも取り組む。(過去のインタビュー記事

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