生き残りをかけたメディアリレーション 〜メディアに選ばれるための秘訣とは〜―病院マーケティング新時代(8)

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本連載について
人口減少や医療費抑制政策により、病院は統廃合の時代を迎えています。生き残りをかけた病院経営において、マーケティングはますます重要なものに。本連載では、病院マーケティングサミットJAPANの中核メンバー陣がオムニバス形式で、集患・採用・地域連携に活用できるマーケティングや広報について解説します。

メディア暴露の光と影

著者:小山晃英(こやま・てるひで)/病院マーケティングサミットJAPAN Academic Director
京都府立医科大学 地域保健医療疫学
京都府立医科大学附属脳・血管系老化研究センター 社会医学・人文科学部門

メディア露出で押さえるべき光と影

「メディア露出成果としてOOOO万円!」と広報成果を説明している場面に出くわすことがあります。広報の成果として、広告換算費用を示すことは、ゴールドスタンダードであり、わかりやすい指標です。

メディアに露出されることは、暴露量の意味でも、広報換算費用の意味でも、絶大な威力があります。そうなると、メディアに取り扱われることは正義と捉えられるかもしれません。もちろんメディアに露出することは、病院の認知度(ブランド力)が向上し、集患に繋がる可能性は高いです。

一方、メディア露出により、一見さんの外来患者数が急に増えてしまうと、外来予約のパンクと待ち時間の増加に繋がる事例を、最近伺いました。メディアに出ていた病院で診てもらいたいと考える人は、健康に対する意識が高いため、手術、入院につながる率が実は少ないということもあるようです。結果的に、収益はそこまで上がらないのに、既存の患者さんが不利益を被ったり、スタッフの疲弊に繋がったりします。

ニッチな分野であれば、治療法や診断に関する情報の発信は、その領域の啓発に繋がる可能性はあります。また出演されている個人のブランディングとしては、メディア出演は非常に有効です。病院組織のため、と考えると必ずしもメディア露出が全てにおいて万能なわけではなく、その反応には時として光と影があるようです。

学術領域でもメディアとの関係性は近年、よく議論されています。新しい発見が報道される時には、間違った情報や、ある一定の情報だけが切り取られて報道されてしまうこともあり、混乱を招くことがあります。「情報の受け手側のヘルスリテラシーを向上すべき」または「メディアの方々に対して、情報発信の教育をしないといけない」という声を聞くことが多いですが、それは取材される対象が行うことではないと考えます。取材される側は、テーマに対して、どのように内容を伝えるか、しっかりと軸を作っておくことが大事だと考えます。

選ばれる秘訣はスピード感と使い勝手

一方で、今回の副題である「メディアに選ばれる秘訣」は、スピード感と使い勝手だと考えます。メディア対応にはスピード感が必要ですので、メディアの注文に対して、取材対象側がすぐに受け答えできることは必須です。当然、信頼関係がひとたび出来上がれば、繰り返し取材される可能性も高まります。そのため、取材依頼が来た時には素早く対応し、発信する情報に関しては軸を持って、とメディア暴露だけではなく、メディア対応の中にも光と影の関係があるようです。 

5年間でTV出演33回。目指せ病院業界No.1のサブちゃん(御用聞き)へ!!

著者:松本卓/病院マーケティングサミットJAPAN Executive Director
小倉記念病院 経営企画部 企画広報課

サブちゃんて、あのサザエさんのサブちゃんです。あの前髪くらい尖った広報担当者になりたいものです。でもスクーターはピンクで可愛いみたいな。まぁ、この真意はあとでお伝えするとしまして、当院はこの5年間でTV出演33回、新聞掲載18回、雑誌掲載18回、メディアに取り上げられました。多い方かなと自負しているのですが、どうでしょう??

タダで桁違いの拡散力と、高い信憑性

まずはメディア露出について考えましょう。メディア露出の良い点は「タダ」・「拡散力」・「信憑性」の3つだと思います。

マーケティングツールとしてオウンドメディア(ホームページや広報誌など)を活用する際、一番ネックになるのは「お金」です。ここに投資することがどうしてもできない病院も多いと思いますが、費用をかけずに多くの生活者とコミュニケーションを取れる方法がメディア露出です。

当院のホームページは1日約3,000名のユーザー数ですが、今年3月にフジテレビ水曜22時放送の「梅沢富美男のズバッと聞きます!」で放送してもらったときは、視聴率から算出するとリーチ数800万人ですよ!! 年間何百回も更新して、時間も費用もかけているホームページをはるかに凌ぐ数字です。しかもTVは放送時間帯のwebユーザー数が極端に伸びますし、ゴールデンタイムの番組となるとTwitterでツイートする人がものすごく多く、情報が拡散してきます。

当院がTV露出するときにはエゴサーチしまくりですよ。梅ズバでは厳しいツイートが多いかもなと思っていたのですが、90%以上がポジティブなツイートでした。ありがたいことに当院周辺に在住と思われる方々が「やっぱり記念病院だ」「心臓って言ったら記念病院でしょ!!」など書き込んでもらって、本当に感謝です。

信憑性については「うちの病院はすごいんです」と自ら言うよりも、「ここの病院はすごいんです」とメディアから言ってもらったほうが信じてもらいやすいですし、メディアは公共性がありますから、なおさら信憑性が高まりますね。もちろんSNSやGoogleの書き込みなど、メディアを通じなくても個人で意見を発信できる時代となりましたから、メディアだけカバーしておけばいいと言うものではありません。ただ、今の時代でもメディアが強い影響力をもつ媒体であることは間違いないです。

テレビ取材を呼び寄せる2大ポイント

メディア露出の良い点については「そんなこと、わかっとるわ!!」と言われる内容を書いてしまったのですが、皆さん一番関心があるのは「どうやったら、メディアが来てくれるん!?」と言うことではないでしょうか。

小倉記念病院は心臓疾患で実績があるから、昔からメディア露出してるでしょ!?と思われる方もいるかもしれませんが、そうではないですね。企画広報課が設立される前はどうだったかと言いますと、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」に日本で初めて心臓カテーテル治療を行なった延吉名誉院長が出演されたことはありますが、現在のように頻繁にメディア露出することはなかったです。数年に1回あるかないか程度だったと思います。

むしろ今思うのは、「ずーーーーーーーと、もったいないことをしていたな(怒)」と思うわけです。当時から心臓治療ではトップランナーだったわけですから、上手なメディアリレーションを行なっておけば、もっとメディア露出は可能だったはずです。

でもそうしなかった理由はなんとなくわかります。1つはメディアに露出せずとも患者さんはやって来るからメディアへの情報発信を必要としなかった。また診療報酬は右肩上がりで経営もうまくいっているから。最後のもう一つが、専属部署がないためにメディアの連絡をとった事務員は「うわー、めんどくさい電話を引いてしまったー!!」と罰ゲームのような感じだったのでしょう。おそらく。私からするとそんな電話は「神様からのプレゼント」だと思ってしまいますけどね。

メディアリレーションというものをやってみようと思った当初は「何々!? ニュースリリース!? 記者クラブに投函できる!? 市役所の中にあるらしいぞ!!」からスタートしましたが、最初は反応がからっきしでした。現在でも記者クラブ経由の取材オファーは皆無です。ニュースリリースの作り方が下手なだけかもしれませんけどね。そんな状態からなぜ5年間でTVに33回も出れたのか!? それは「生活者が驚くネタがあること」「取材が楽なこと」この2つがポイントです。

テレビ取材を呼び寄せる「生活者が驚くネタがあること」

まず「生活者が驚くネタがあること」ですが、もちろん最先端医療の取材も多いです。こう聞くと「ほら、うちの病院だと無理じゃん」と思われる方がいるかもしれませんが、メディア露出の1/4程度は地元企業とのコラボ商品開発です。

当院ではシャボン玉石けん株式会社とバブルガード、大分製紙株式会社とエコトイレットペーパー、株式会社ごとう醤油とドレッシング、地元焼肉屋「龍園」と減塩焼肉のたれなど、地元企業とコラボ商品を作っています。これがメディアにウケます。

特に地元ローカル局は「地元病院と地元企業が異色のコラボレーション!?」のような形で報道してくれるわけです。もちろん当院には1円も入ってこない仕組みにしていますから、これでお金儲けをしていると勘違いされないようにお願いします。

そもそも医療とは直接関係のない企画をやらせてくれる上司・役員に感謝ですね。当院とコラボして商品が売れる企業もWIN、その商品を使う地元消費者もWIN、そしてメディア露出ができる当院もWINと良いこと尽くめの企画です。この企画ならどの病院でもチャレンジできますから、ぜひ検討してみてください。

病院をエンターテイメントの視点から見ると無限の可能性があると思います。それはけしからん!!と思う方もいるかもしれませんが、医療の良し悪しは生活者にわかりにくいので、このような取り組みでも当院の「想い」を伝えるようにしています。現在も新たな企画に挑戦中ですので、楽しみに待っていてください。

テレビ取材を呼び寄せる「取材が楽だから」

上記で「いやいや、小倉記念病院さんは心臓疾患への最先端医療で生活者が驚くネタが昔からあるでしょ!? でも記者クラブへのニュースリリース失敗してるんでしょ!? それでどうやってメディアが来るようになったの!?」と思われた方が多いと思います。そうです。地元企業とのコラボ商品がきっかけではありません。

というより、きっかけはありません。「医療や健康ネタの時には、まずは小倉記念病院に問い合わせしてみようと思ってくれるディレクターさんたちを少しずつ増やして、リピーターになってもらった」が答えです。

なぜリピーターになるのか!? 「取材が楽だから」です。これが非常に重要です。楽というと取材班がサボっているみたいに聞こえますけどそうではなくて、取材班が撮影を行う段取りを完璧に準備するからです。大体撮りたいのは「医師の治療風景」「医師のインタビュー風景」「入院患者のインタビュー風景」「使用する医療機器のブツ撮り」。特に患者さんは「顔出しOK」が求められるので、OKしてくれる方を探します。これを松本ひとりでやっている訳ではないんです。医師・看護師たちが、患者さんの調整・部屋の調整(インタビューのために個室も準備)・スケジュールの確保などほとんどやってくれます。もう奇跡です。

私が看護部に「また取材の依頼が来ましたー」というと、「今度はどこのテレビ!? なんの治療!? いつ!?」と、もう打ち返す気マンマンなんです。速攻で電カルを開いて該当患者さんを探してくれます。入院前の患者さんであれば診療部長や主治医が自ら電話して趣旨説明して了承を取ってくれますから。私は見とくだけですよ(笑)。病棟・オペ室・カテ室の看護師さんも最近取材慣れしてますし(笑)

他職種が協力してくれる理由は、やはりこの5年間でマーケティングの効果を一緒に実感してきたからだと思います。オール小倉記念病院でメディアに対応できるというのは強みですね。

スピード感でさらに「取材が楽」に

もう1つ重要なのが、スピード感です。このディレクションは私が行う感じですね。なぜスピード感が重要か!?

ほとんどの取材は期間が短いからです。地元テレビ局だと3日後に放送するようなことがざら。ですから、取材班を迎え入れる準備を1日程度で終わらせなくてはいけません。「準備をすぐに終わらせる→取材を滞りなく進める→放送される→取材したディレクターにニュースリリースを送付する→取材依頼が来る→準備をすぐに終わらせる→取材を滞りなく進める→放送される」のループに入ってしまえばこっちのもんですね。これを繰り返すたびにメディア露出が増えていきました。

この「驚くネタの提供」「取材が楽」「スピード感」がサブちゃん(御用聞き)の所以なのですが、もちろん希望されるネタを準備できないときもありますし、そもそも小倉まで取材に行くことができないと言われることもあります。

その時はどうするか!? DPC実績から調べたり、当院の医師に相談したりして、適任であろう他病院の医師を紹介します。もちろん当院の医師から事前に「取材の依頼があるみたいだから、先生のこと紹介させてもらったよ。電話あると思うから対応よろしく」と連絡を入れてもらいます。そうすると、メディアから感謝されますね。だから「まずは小倉記念病院に問い合わせしてみよう」と思われるわけです。

「いや、だからその1回目のオファーがメディアから来ないんだよ!!」と思われた方もいるでしょう。それはなんとか記者クラブ経由で頑張るしかないかもですね。記者クラブへのニュースリリースは失敗していると言いましたが、「この病院はニュースリリース出すくらいだから、取材を依頼しても快く協力してくれるだろう」との印象づけはできると思います。あとは1回目が来ることを信じてやり切るしかないでしょう。1回目が来たときはさりげなく「うちこんな医療もやってますよ」と視聴者目線でウケるネタを提供してください。また来てくれるはずです。

何のためにメディア露出するのか

さて、「テレビにいっぱい出れたぞー」と喜んでいるだけでは芸がないので、数値化できるものはしておこうと、そのメディアのリーチ数(拡散力)と広告換算費(同規模で露出するために必要な広告費)は報告するようにしています。ちなみに2017年度のリーチ数は約650万人、 広告換算費は、1億6,200万円となりました。でも正直、だから何!?っていう感じです。もちろん把握しておくことはいいかもしれませんが、本質はそこにはないような気がしています。

最後に失敗談を。取材班はあとで編集がうまくいくように、ネタはいっぱい撮っておきたいわけです。使うか使わないかは編集の段階で決めると。メディアに選ばれるためにはこのネタの供給量も重要だったりします。皆さんもなんとなく想像できるのではないでしょうか??

私の失敗は、インタビュー協力してくれた患者さんのコメントがオールカットで放送されなかったこと。「それはないんじゃないか」とご本人からお電話もいただきました。病棟からも「失礼極まりない」とお叱りを受けました。もう心の中では「いやいや、俺に編集権あるわけないやん。事前にこの内容でいいですかなんて確認されるわけでもないのに…それがメディアやん…これだけの供給量があるからうちに来てくれるわけやん…」とやましい感情が出てしまう時もありますが、でもそんなの患者さんや病棟には関係のないことです。もちろん撮影同意書には放送に関することや編集権も明記されているのですが、患者さんにとってはテレビに出るということで緊張している部分もありますから、説明していてもよく覚えていないことが多いと思います。

ですから誠心誠意、心を尽くして説明し、「患者さんが言われることも納得できます」とお話しするわけです。ですからメディア露出はリスクゼロではありません。このようなことも起こり得ます。それからは「ご協力いただいたのに、使うかどうかはまだ未定なんです。すみません(汗)」とかなり印象付けて伝えるように心がけています。

でも、リスクがあるからもう取材の受け入れはしないでおこうとなどは本末転倒だと思っています。ホームページ運営でもよくあるのですが、「こんなことを患者さんに言われたから、明記しておいてほしい」と。もちろんいいとは思うのですが「患者さんに何か言われた時に、ホームページに掲載していますと言い訳できるようにしておきたい」という心が丸出しなんですね。患者さんのためではなく自己防衛のためです。

それがダメだというわけではないですが、逃げずに施策を行い、何かあれば誠心誠意心を尽くして対応し、常に患者さん視点で仕事を行いたいと思う、今日この頃です。

東京初開催!病院マーケティングサミットJAPAN2019

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