病院事務職員の転職活動記(5):医事課以外の事務職員の転職市場は?

前回、前々回の記事では医事課職員の転職市場をまとめてきましたが、今回は医事課以外の事務職員の転職市場について考察したいと思います。

医事課職員の転職市場 についてはこちら
(3)「デキる」医事課職員へのニーズの高さ(スタッフ編)
(4)「デキる」医事課スタッフへのニーズの高さ(管理職編)

医事課以外に、病院にはどのような事務部門があるのか?

まず、そもそもどのような事務部門が病院にあるのかをざっくりまとめてみました。

医療連携部門
事務が担当するのはいわゆる「前方連携」と呼ばれる、クリニックへの開拓・営業や受診患者のコーディネートの業務です。特に地域医療機関との連携を通じた初診患者の集患は病院経営に直結する非常に重要な業務になります。

経理部門
いわゆる、イメージ通りの「経理課」です。日々の業務は病院全体のお金の流れの管理、プラスで年に一度の決算業務といった感じでしょうか。病院によっては、予算に関して各部門との折衝を行ったりもします。

人事部門
大きく「採用」と「給与・労務管理」に仕事が分かれますが、いわゆる「人事部」です。採用については病院で働く職種ごとに細分化されていて、特に医師や看護師の採用は診療体制にそのまま直結する仕事になります。

総務部門
病院によって業務範囲は様々ですが、行政対応(診療報酬関連の届出業務含む)や地域との窓口役、その他病院の担当部署が決まっていない業務を引き受けるという仕事が一般的なようです。

資材部門(用度課・物品管理課)
こちらは病院ならではの部門で、高額機器や診療材料の購入、また院内への医療材料の供給(SPDと呼ばれます)の管理が主な業務です。病院によっては滅菌業務を事務が担当することもあります。

教育研修部門
病院には、様々な職種のスタッフが入職してくるので、それぞれの専門性やキャリアに沿った教育、また院内全体で受けるべき教育をだれかがコーディネートする必要があります。これを担当するのが教育研修部門です。病院の規模や性質によっては人事と一体化しているところもあるかもしれません。

施設部門
文字通り、病院の施設管理を行う部署です。病院全体の設備投資の判断や工事のコーディネート、工事業者や委託業者との窓口役の業務がメインとなります

情報システム部門
文字通り、病院の施設管理を行う部署です。病院全体の設備投資の判断や工事のコーディネート、工事業者や委託業者との窓口役の業務がメインとなります。

診療情報管理部門
診療情報管理士が勤務し、一般的には診療録の監査、がん登録、DPCコーディングなどを行っています。そのほか、病院によっては医事課の一部だったり、システム部門の一部だったり、データの分析や抽出業務を行っていたり、病院によって職場環境や業務内容がまちまちなイメージです。

異業界出身者が活躍できそうな分野

転職コンサルタントとの面談や求人情報を見る中で、経理・資材管理・施設・システム分野の求人についてはあまり話を聞くことがありませんでした。単純に、私がその部署での経験がないから紹介されなかっただけなのかもしれませんが、ここについては「他業界からの転職組が活躍できるフィールド」と見なされているのかなとも思いました。

例えば、経理であれば一般企業の経理マンは病院の経理にもなじんでいけると思います。施設・システムは専門性の高い分野なので、他の業界のノウハウは病院でも大いに生かせるはずです。資材管理は、機器や材料の購入を経験した他業界のノウハウがそのまま生かせると思います(製薬業者や医療機器メーカー出身者だと、医療に関する知識もあってなおよさそうです)。

病院に新卒で入った私がまだ関わったことのない部署ですが、病院勤務一筋で、単一部署の経験としてだけだと、自身のセールスポイントとしてアピールするには少し弱いのかなと感じました。

市場価値の高そうな病院の部門や業務

転職コンサルタントとの面談の中で、市場価値が高そうと思ったのは以下の3つです。

(1)新規クリニックの開拓・営業経験(医療連携部門)

先にも書いた通り、初診患者の集患は病院経営に直結する非常に重要な業務になります。特に急性期の病院は、初診患者をできるだけ多く集め、再診患者は地域と一緒に見るというスタイルでの運営になりますので、地域連携は必要不可欠です。クリニックへの開拓・営業を通じたネットワークづくりをできる人材は、どの病院も必要としている印象を受けました。

また、集患には医師の協力が不可欠です。業務経験の中では、「医師を動かせるコミュニケーション力や業務遂行力があるのか」も見られているのかなと感じました。

(2)医師採用を通じた診療科体制の立て直し(人事部門)

2つ目は医師の採用の経験です。こちらは結構特殊スキルだと思いますが、院内の部長・教授クラスと協力し、診療科医師の採用を進め、診療体制を安定化させたり、建て直したりできる経験が重宝がられているようです。

こちらも(1)と同様に、「病院経営に直結する業務であること」、また「医師を動かせるコミュニケーション力や業務遂行力が求められること」を問われていると感じました。

(3)施設基準の管理や届出の経験(総務部門)

こちらの内容は、前回の記事で書いた医事課管理職の業務とも重なりますが、病院の診療体制を踏まえた適切な施設基準の届出・管理をした実績はよく確認されました。(1)や(2)と比べると医事寄りの仕事なので、医事課の人は欲張って施設基準に関わる業務も経験できると、病院職員としての市場価値がグッと高まりそうです。

(※本記事は、「病院で働く事務職のブログ」2019年2月25日掲載の記事を一部編集の上、転載したものです)

【プロフィール】
病院事務職歴7年。新卒で500床規模の急性期病院の事務職員として入職後、医事課入院部門、経営企画部門、医療の品質改善部門に所属。診療報酬請求や各種窓口対応などの医事業務から、看護業務改善や病院の機能評価受審の事務局担当といった院内プロジェクトまで様々な業務に従事。現在は再び医事課入院部門に所属し、医事業務全般に加え、医事課スタッフの採用・教育、監査対応や委員会の事務局業務にも携わっている。

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【シリーズ一覧】
(1)転職活動を始めたきっかけ
(2)転職コンサルタントとの面談
(3)「デキる」医事課職員へのニーズの高さ(スタッフ編)
(4)「デキる」医事課スタッフへのニーズの高さ(管理職編)
(6)転職活動を通じて考えた病院事務のキャリア

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