病院事務職員の転職活動記(10):転職活動を経て、病院内の医事課へ異動

今回の記事はもはやタイトルでネタバレしていますが、これが最後の転職活動記となります。

【前回までのあらすじ】
2社の面接でのミスマッチと不合格を経て、何とか3社目で公立病院の企画室から内定を受けた筆者ですが、なんとそのタイミングで人事から内示の辞令が…。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
(7)企業立の医療法人との面談
(8)クリニック経営支援のコンサル会社との面接
(9)公立病院の企画室との面接

人事異動を希望

実は、2018年の夏頃に人事や上司と今後の異動希望について相談をしており、そこで現部署から異動したいことと、病院職員として働くうえでもう一度医事課でのキャリアを積みたいことを伝えていました。

「なぜもう一度医事課に戻るのか?」という理由ですが、個人的には大きく以下の2つがありました。

1.病院事務のコアスキルとして医事能力を磨いていきたい

私は新卒で病院に入って2~4年目に医事課にいましたが、当時はまだ新人~若手クラスでの業務ということもあって基本的なルーチン業務が中心でした。もちろん、その時の経験があったからこそ次の部署に行っても何とかやっていけたのですが、自分自身の中で診療報酬の請求や改定を一人前にこなすことができるようになった、という実感を持つことはできていないままでした。

病院の事務職員として働くうえで医事の能力は必須であると思っていたので、より広く・深く医事の業務に関わりたいということが、医事課に戻ることを希望したということがまず一つの理由でした。

後付けではありますが、今回の転職活動を通じて、自分のような病院での経験をベースにした事務職は、医事スキルを持っていることが今後の昇進・昇格において非常に重要視されるということを知りましたので、当時の考えは間違っていなかったと思っています。

2.医事課で中堅職員の立場として仕事をしてみたい

二つ目は個人的な理由なのですが、他部署で経験を積んだ自分の立場でもう一度医事課を経験したい、という希望がありました。

残念ながら、私の所属する病院の医事課は若手世代の退職が相次いでいました。私自身も、医事課で一緒に働いていた同期がどんどん辞めていくという辛く、悲しい思いをしました。その結果、特に5~10年目の医事課職員がほぼいないという危機的な状況になっていて、周りからもこのような環境で新人を入れて大丈夫なのかという声が多く上がっていました。

病院の事務人材の供給源となっているのは間違いなく医事課であり、まず医事課がしっかりしていないと事務部門は成り立たないということは、他病院を見学する中でも実感していました。

自分一人が行ってその問題が解消されるほど自分はスーパーマンではないですし、組織は簡単ではありません。それでも、外野から問題提起をするのではなく、自分がいちプレイヤーとして医事課という現場の問題解決に携わりたい、という思いがあったことが、医事課に戻ることを希望したということが2つ目の理由でした。

転職活動の結果は…転職せずに、医事課へ異動することに

人事の方は、上記のような私の希望を汲んでくれたのか、もう一度医事課に戻すという内示をくださいました。なんともすごいタイミングですね。

私は転職活動の結果、「現在の病院に残り医事課で働くこと」と「転職して他病院の企画室で働くこと」という二つを天秤にかけることになり、最終的に今の病院に残ることを決めました。

残ることを決めた理由は、これまでに書いた異動希望の理由が叶えやすい環境であったこともありますが、その他にも以下のような要素がありました。

これまでの経験と院内のネットワークで仕事をしてみたかったこと

「強くてニューゲーム」(※)という言葉がありますが、周りに顔と仕事を覚えてもらった自分が今の環境でどれだけやれるのか、ということを試してみたいという考えがまずありました。
(※)…ロールプレイングゲームなどをクリアした時点のセーブデータを引き継いで新たに最初からゲームをすること。最初から経験値や装備などの蓄積がある状態で物事に取り組む様を表す。

現在の部署で培った、医療の世界における業務改善や品質管理の考え方、データの分析やモニタリングといったスキル、他部署の管理者と話をする中で見てきたマネジメントの在り方などを、事務系の部署に適用して仕事をしてみたいということは、いまの部署で働く中でずっと思っていたことでした。

また各部署と一緒に仕事をする中で築けたネットワークや、勤務年数を重ねて病院全体のことが理解できるようになってきた中で、もう少し今の病院で働いてみたいという思いもありました。

管理職への昇進が早めに来そうなこと

内示の後に医事課長の方にもご挨拶に行ったのですが、「近いうちに、医事課内の各係の係長クラスとして、管理職の立場で仕事をしてもらえるように期待しています」という趣旨の話をいただきました。管理職の立場につくことで、

  • 病院内でより大きな問題解決の機会につきやすくなること
  • 管理職としてチームを動かす経験を積むことができること
  • 若手事務職の離職防止のための取り組みに関わりやすくなること

を達成しやすくなると思っていましたし、また打算的な話ではありますが、転職活動を通じて、管理職経験の有無により外部から提示されるポストがだいぶ異なることも感じていました。

もちろん、管理職になるということは本当に大変なことだとは思いますが、その経験を積むためには巡りあわせもあるので、機会があればトライ出来る環境に身を置けることは自分にとってプラスになると考えました。これが、二つ目の理由です。

自病院における負のジンクスの停止

三つめは非常に個別的な理由なのですが、自分の部署は前任者が全員辞めている状況で、周りからは「あなたは辞めないでね…」と言われるような、負のジンクスがあった部署でした。

病院としては必要な部署なので、自分自身はポジティブに異動をして、部署の流れを変えてやりたいという考えをずっと持っていました。前任の退職した先輩に相談をしたときは、「それは人事やその部署の上司が考えればいいことだから、あなたは気にしなくていいんだよ」とは言われましたが、その考えは変わりませんでした。

他病院に目を向けてみると、自分と同じような院内の業務改善や品質管理の業務を経験した事務スタッフは、次のポジションに異動するということが起き始めていました。自分の病院でも、そのような医療の現場を深く知った事務職員が、その部署に固定されるてしまうのではなく、次のキャリアで活躍できることを示していきたい、ということが三つ目の理由でした。

というわけで、転職活動結果は、人事異動により自病院の医事課へ異動して働くということになりました!転職活動記の結末が、転職活動をしないというのもなんだか変わった話ではありますが。転職活動を通じて考えた、自分がやりたいと思う仕事やキャリアに少しでも身を近づけられるように、これからも頑張っていきたいと思います。

(※本記事は、「 病院で働く事務職のブログ 」2019年3月25日掲載の記事を一部編集の上、転載したものです)

【プロフィール】
病院事務職歴7年。新卒で500床規模の急性期病院の事務職員として入職後、医事課入院部門、経営企画部門、医療の品質改善部門に所属。診療報酬請求や各種窓口対応などの医事業務から、看護業務改善や病院の機能評価受審の事務局担当といった院内プロジェクトまで様々な業務に従事。現在は再び医事課入院部門に所属し、医事業務全般に加え、医事課スタッフの採用・教育、監査対応や委員会の事務局業務にも携わっている。

▶▶病院・クリニック事務職(管理職/管理職候補)のご転職・キャリアのご相談はこちらから

【シリーズ一覧】
(1)転職活動を始めたきっかけ
(2) 転職コンサルタントとの面談
(3)「デキる」医事課職員へのニーズの高さ(スタッフ編)
(4)「デキる」医事課スタッフへのニーズの高さ(管理職編)
(5)医事課以外の事務職員の転職市場は?
(6)転職活動を通じて考えた病院事務のキャリア
(7)企業立の医療法人との面談
(8)クリニック経営支援のコンサル会社との面接
(9)公立病院の企画室との面接

【関連記事】
病院事務職のキャリアパスとは?─10年後に後悔しないための働き方
40代で気付いた改善意識。事務職が吸収すべき「ソト」の視点―三愛病院 宮本芳誠医事課長

[adrotate group=”2″]

関連記事

  1. 医師という職業とは―医師への選択、医師の選択(野末睦)

コメント

コメントをお待ちしております

HTMLタグはご利用いただけません。

スパム対策のため、日本語が含まれない場合は投稿されません。ご注意ください。

医師の働き方改革

病院経営事例集アンケート

病院・クリニックの事務職求人

病院経営事例集について

病院経営事例集は、実際の成功事例から医療経営・病院経営改善のノウハウを学ぶ、医療機関の経営層・医療従事者のための情報ポータルサイトです。