【第30回】スタッフ間のトラブル勃発!ささっと間に入り、ひび割れを補いましょうー事務長の悩みは99%解決できる

野々下みどり(ののした・みどり)

株式会社LHEメディカルコンサルティング代表取締役。熊本大学法学部を卒業後、約20年間にわたり社会医療法人社団シマダ 嶋田病院に勤続。その間、医事課長、診療情報管理課長、情報システム課長、診療支援部長、企画広報部長を歴任。2018年、医療福祉の経営コンサルタントとして起業し、現職。医療経営・管理学修士(九州大学大学院医学系学府)、診療情報管理士指導者の資格を持つほか、日本診療情報管理士会評議員などを務める。

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診療報酬改定、コロナ対応…。2022年も多忙を極めている事務長へ

2022年がスタートして、もう2か月が過ぎようとしています。

皆さん「今年こそは」と気持ちも新たに、2022年を迎えられたのではないでしょうか。しかし、オミクロン株に変異した新型コロナウィルス感染症は拡大の一途をたどり、各地を地震が襲っています。まだまだ穏やかな日々は迎えられそうにありません。

病院も診療報酬改定の準備や、新型コロナウィルス感染症への対応などで多忙を極めているのではないでしょうか。

私は先日、とある稲荷神社に初午のお参りに行ってきました。人との接触を避けるため早朝4時に起きて、6時には神社へ。「また新しい1年がスタートする」というワクワクした気持ちでマスクを外し、久しぶりに森林の空気を思い切り吸い込んで、清々しさを満喫してきました。

(筆者撮影:ある寒い冬の朝の散歩風景)

喧嘩両成敗。もめごとは双方に原因がある

そんな清々しさも束の間、ある事務長からご相談が。
スタッフ同士のもめごとにより、職場の雰囲気が悪くなっているとお困りのご様子でした。「Bさんが『Aさんから冷たい対応をされるのがつらいので、辞めたい』と言ってきた。Aさんには困ったもんだ」
事務長がBさんから聞いた話を整理すると、以下の経緯のようです。

  1. Aさんが、Bさんに冷たい態度をとるようになった。
  2. Bさんは、Aさんから冷たい態度をとられる理由が分からず、「Aさんとの関係が上手くいかない」と思い悩み、退職を申し出た。
  3. Bさんは、周囲にAさんに対する愚痴や不満をこぼしている。

2者間で起きる揉め事やトラブルには、必ず双方に原因があるはずです。それぞれ平等に言い分があり、理屈があるので、喧嘩両成敗だと思っています。

詳しくヒアリングをしていくと、Aさんが冷たい態度をとっていた理由は、Bさんからミスを指摘された際に「言い方が冷たい」と感じたことが発端でした。Bさんは「Aさんのため」と思ってあえて厳しく言ったようですが、叱責しただけで終わり、説明が足りなかったために、Aさんに真意は伝わらないまま……。

Bさんにも反省すべき点はあり、今は周りに愚痴ばかり言って職場の雰囲気を悪くしているようです。Aさんだけが問題というわけでもなさそうです。言動に悪気があろうとなかろうと、仮に善意でしたことだとしても、相手の受け取り方次第でもめごとやトラブルに発展するのです。

当事者間の意思疎通が難しいなら、第三者が補い役に

事務長には「2人の感情に引っ張られず、片方の肩を持たずに、双方の言動の背景や真意を相手に説明してあげてください」とアドバイスしました。

私たちは共通の言語・伝える手段を持っているのに、相手に意思がうまく伝わらないことが多々あります。それによって、誤解が生じたり、マイナスの感情が生まれてしまったり、職場全体の雰囲気が悪くなったりすることもあります。

当事者間での意思疎通が難しいのであれば、誰かが補ってあげてほしいと思います。第三者が、コミュニケーションツールになればいいのです。
職場の雰囲気がよくなれば組織は活性化し、スタッフのやる気も芽生えます。スタッフ間のトラブルが起きたときは、面倒だと嫌がらずに、そのひび割れをささっと補ってみましょう。「組織にプラスのエネルギーが広がっていくなら、一肌脱ぐか」と、私もいつも自分に言い聞かせています。

「ありがとう」の反対は?

最近メンターから、教えてもらった言葉があります。
「『ありがとう』の反対は『当たり前』」。
「当たり前」だと思っていることに、私たちは感謝できなくなります。何かのタイミングやきっかけがあれば、生きていること・働いていること・生活できていることに感謝しますが、日常に追われていると忘れてしまいがちです。

先程の事例も(指導の仕方に問題があったにせよ)、AさんはBさんに指導されたことに、BさんはAさんが指摘を聞いてくれたときに、互いに「ありがとう」と思えたら、もめごとには発展しなかったかもしれません。
日常が当たり前だと感じてしまうと、感謝の気持ちを持ちにくくなってしまいます。

私も先日、ある福祉施設でスタッフの代わりに電話を取ったときに、このことを実感しました
相手の方は名乗らず、挨拶もなく、いきなり「入居を検討しているから施設のことを聞きたい」と話を始められたのです。声からご年配の方かもしれないと思い、年齢を尋ねました。
「なぜ歳を聞く必要があるんだ!」と怒鳴られたので、「年齢によっては、入居先が福祉施設ではなく介護施設になる可能性があるからです」と説明すると、80代とのこと。この施設への入居は難しいことを説明とすると、「じゃあ、他の施設を教えろ!」とまた強い口調です。思い通りに進まないことにイライラされている様子で、口調はますます荒くなっていきました。

ご説明を重ねて会話を終えましたが、電話を切った後、腹が立つというよりもとても寂しい気持ちになりました。「もしかしたら、私もこの方のような歳の取り方をしてしまうかもしれない……」

先程の入居希望の方は、お電話越しに「何もかも自分の主張が通って当たり前」だと考えているからこそ、思い通りにいかないことにいら立っているように感じました。

私の祖母は、90歳を超えるまで生きましたが、私も同じ年齢くらい生きられると仮定すると、もう折り返し地点です。「人の振りみて…」ではないですが、すべてを当たり前だと思わず、さまざまなことに感謝して、日々豊かさ・明るさ・楽しさを感じされられるように歳を重ねていきたいです。

事務長、一緒にいい皺を刻んでいきましょう。

≪≪【第29回】「みんなにいい顔をする」事務長はだめですか?ー事務長の悩みは99%解決できる

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