医師採用にウェブ面談/面接を導入するメリット・デメリットと、5つの注意点

新型コロナウイルス感染症の流行拡大により、医師の採用活動に影響が及んでいます。対面での面接が実施しにくくなっている中、オンライン(ウェブ)での面談/面接に活路を見出す医療機関も。とはいえ、「難しそう」「どう使えばよいかよくわからない」という採用担当者は少なくないのではないでしょうか。エムスリーキャリアの医師紹介の専門コンサルタントに、オンライン活用シーンやメリット・デメリット、活用時の注意点について聞きました。

医療機関によって異なる、オンラインの活用シーン

──そもそも、なぜ採用業務へオンラインを導入する必要があるのでしょうか。

例年、医師の異動・転職は一定数発生しており、所属医師の中から欠員が出る可能性はどの医療機関にとっても否定できません。通常であれば、欠員の補充や増員は1年間を通じて行いますが、今年は新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、欠員補充にあてられる期間が短くなります。このため、医師確保のハードルが通常よりも上がってしまうのです。計画通りに採用できなかった場合、医師不足の影響は来年以降の病院経営にも影を落とすことが予想されます。

現在、ウェブ面談/面接を未導入の医療機関では、採用活動が実質ストップしてしまっており、有力な候補者がいてもアプローチできず 機会損失している懸念があります。この状況を打破するために、ウェブ面談/面接の導入に踏み切る施設が徐々に増えてきているのです。結果的に、競合施設が少ない中で採用できているケースも見受けられます。

──具体的に、どのような場面でオンラインが活用されているのでしょうか。

オンラインで対応できることとしては、(1)条件確認、(2)最終面接の前の面談、(3)最終面接―の3つがあります。どの段階で取り入れるかは医療機関によって異なりますが、オンラインのみで採用活動を完結させる医療機関は少ないのが現状です。採用担当者あるいは事務長がウェブ面談で候補者を絞りこみ最終面接は対面で、という使い方が多いでしょう。ただ将来的には、動画での院内見学や同僚とのウェブ面談など、オンライン活用の幅はどんどん広がっていく可能性があります。

オンライン活用のメリット・デメリット

──オンライン活用のメリット・デメリットをそれぞれ教えてください。

それではメリットからお話しします。まず、新型コロナウイルス関連でいえば、採用活動に伴う院内感染のリスクを低減できます。特に緊急度の高い採用案件がある医療機関にとっては、間断なく採用活動を進めることができるのも利点です。求職者にとっても「オンライン対応してもらえるか」が求人を選ぶ際の条件の一つになるかもしれません。

また、移動に伴う時間と費用を削減できるほか、日程調整もしやすいため面談/面接設定にかかる時間を短縮できます。求職者にとっても医療機関にとっても面談のハードルが下がるので、対面よりも多くの医師と接点を持ちやすいという側面があるのです。交通機関の遅延・渋滞によるスケジュールの遅れなども発生しません。特に求職者が遠方在住だったり、育児中などで時間の制約が大きかったりする場合は、オンラインを活用するメリットが大きいです。

前述したように、ウェブ面談でお互いに理解を深め、より自院にマッチしていそうな先生に次の選考へ進んでいただく、というように上手に活用すれば、採用業務の効率化はもちろん、ミスマッチ防止にもつながるでしょう。

他にも、実際にオンラインを取り入れている医療機関からは以下のような声が寄せられています。

  • 電話に比べて表情が見える分、話の間合いや求職者の人柄をつかみやすい
  • 資料を画面上で相手に共有できるので、スムーズに進行できた
  • ハードルが高いと思っていたが、意外と簡単だった
  • 録画機能がついているため、後日『言った/言ってない』とトラブルになるリスクも回避でき安心

一方、デメリットについては、接続状況によって通信トラブルが発生する可能性が挙げられます。また、対面に比べれば、相手の緊張感やかすかな表情の変化などはやや読みとりにくいかもしれません。求職者からは「院内見学ができないと設備やコメディカルの雰囲気などについてはわかりにくい」といった声もあります。オンラインを活用する際は、こうした点への対応が必要になります。たとえば、求職者と同じ診療科医師や看護師長、現場で関わるスタッフに説明をしていただくことで、院内の雰囲気をつかんでいただくこともできるでしょう。

加えて、ウェブ会議ツールの有料プランに加入する際や、ウェブカメラ・マイクといった周辺機器の購入コストが発生する可能性もあります。ただ、ウェブ会議ツールは無料でも十分な機能を利用できますし、周辺機器も現在は手頃な価格で流通しています。交通費や日程調整の手間といった、対面での採用活動にかかるコストも鑑み、費用対効果をふまえて採用手法を選ぶのが良いでしょう。
また、人材紹介会社を利用している場合は、その会社がオンライン対応しているか確認してみましょう。

図2:採用手法の比較

ウェブ面談/面接する際の注意点とは?

──オンラインでコミュニケーションをとる際のポイントやコツを教えてください。

これまでの経験から、以下のような点に留意していただくと良いと思います。特にオンライン対応にあまり慣れていない場合は、実際にツールを使いながら事前にシミュレーションをしてみましょう。

オンライン対応のチェック事項

・マイクチェック・カメラチェックの徹底
話が聞こえるか、背景音を拾ってしまい会話に支障が出ないか、相手の表情が捉えられるか、相手に圧迫感を与えないかなど事前に確認しておきましょう。できれば静かな個室で実施することをおすすめします。
・タブレットやスマートフォンなどの端末を利用する場合は充電を十分に
万が一接続が切れてしまった場合などに備えて、電話やショートメールなどの連絡先を事前に共有しておくと良いでしょう。
・議題を事前に共有
スムーズな進行のため、何を伝えたい・聞きたいのかを明確にしておき、要点を端的にまとめて話しましょう。できれば求職者から事前に質問事項を聞き取り、答えをまとめておくとスムーズです。当日は求職者が話しやすいよう、意識的に間をつくったり、意見や質問がないか都度確認したりするのも効果的です。
・相手に伝わることを意識
YES/ NOのどちらともとれるような物言いは避けたほうが無難です。また、ジェスチャーを多く取り入れたり表情を豊かにしたりと視覚にも訴えるコミュニケーションを心がけましょう。
・画面共有や録画機能の活用
資料や画像などを共有しながら話すことで、より自院の役割や魅力、求める医師像を伝えやすくなります。また、後日になって齟齬が生じないよう、事前に医師の許可を得た上で面談・面接を録画・録音しておくことをおすすめします。

不安な点は人材紹介会社に相談を

──最後に、オンライン対応に不安を感じる採用担当者へメッセージをお願いします。

コロナ禍の長期化を受け、事態の収束を待つより “いまできること”に目を向け転職・採用活動を進める医師・医療機関も増えてきています。

オンライン対応の大きなメリットは、交通費などのコスト削減や業務の効率化が図れる点であり、上手に活用することで、採用の間口拡大やミスマッチの防止といった相乗効果も期待できます。これは、求職者である医師にとっても大きなメリットです。

コミュニケーションのとりにくさといった課題は、正しく理解することで適切な対策・準備をすることができます。もしそれでも不安が大きい、という場合には、人材紹介会社に相談してみるのも選択肢の一つです。オンライン対応を行っている人材紹介会社には利用ノウハウがありますから、ツールを使うためのサポートだけでなく、求職者に伝わりやすいコミュニケーションのアドバイスなども実施しています。また、事前に聞きたい内容のとりまとめ・共有や、当日の進行のサポートなども行いますので、お気軽にご相談いただければと思います。

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