定着にも影響?内定から入職までのフォローメソッド ―1から学ぶ医師採用マニュアル【実践編 vol.3:内定~入職前後】

医師採用において、面接から入職までの細やかなフォローが欠かせません。とくに内定を通知した場合は、自院への入職意欲を高める重要なステップになります。具体的にどのようなことに気をつけたらいいのでしょうか。

内定通知:スピード重視でも、責任の重さを忘れずに

実践編vol.2:面接でもお伝えした通り、面接後に内定を出すスピードは最短でその日中、遅くとも1週間以内です。返事が早ければ早いほど、医療機関側の前向きさが伝わる傾向にあります。

ただし、早ければいいとは限りません。大前提として、採用担当者は内定通知を出すこと自体、とても責任が重いものだという認識を持っておくべきです。なぜなら内定成立後に医療機関から取り下げるとなれば、病院の評判が落ちるだけでなく対医師・対紹介会社ともに損害賠償トラブルに発展する可能性もあるからです。法人として判断を迷わなければ即答でも問題ありませんが、少しでも不安や懸念が残るようであれば口頭でも口に出さないほうが無難でしょう。

内定後に医師からの返事が来ない場合

一方、内定を出したものの、医師側からすぐに返事をもらえない場合はどうしたらいいでしょうか。

保留の理由は「いくつか候補先がある」、「家族・親族の了承が必要で一人では判断できない」などが考えられますが、条件面でためらっている部分があるならば、思い切って引き上げるのもひとつの手です。もちろん既存職員とのバランスや院内規定などとの関係から簡単な手ではありませんが、どうしても招聘したい医師に対しては切り札になり得ます。紹介会社を利用しているなら、特例であることを伝えて慣例化を防ぐとともに、採用条件通知書の修正も忘れないようにしましょう。

とはいえ、この段階で採用担当者ができることには限界があります。基本的には待ちの姿勢でいるしかないかもしれませんが、保留期間が長期化するならば定期的に状況を伺うなど、入職意欲を落とさないための工夫をしましょう。

万一、不採用を通知する場合は?

医師は売り手市場ではありますが、医療機関側からのお断りも少なからずあります。

その理由の多くは、条件面は合っているが先生のパーソナリティが合わなかったというケース。具体的には、積極性やリーダーシップ、コミュニケーション力などが挙げられます。これらは判断基準を定量化しにくい面がありますが、病院の組織風土や方針にも関わるため、明確に言語化した結論を出したほうがいいでしょう。

そして検討の結果「お断り」となれば、個人を誹謗中傷しない表現で、なぜ採用に至らなかったのかを具体的に伝えるべきです。中でも紹介会社を利用している場合、その結果が今後の紹介基準になりますから、次の採用活動に着実につなげていきましょう。

内定後フォロー:入職まで長ければ長いほど、定期的なフォローを

医師の場合、内定から入職までの期間が半年で済むこともあれば2年間に及ぶことも。その間、家庭の事情など、採用担当者がコントロールするのは難しい面もありますが、内定は先々の医師生活を約束することでもあるのでなおざりにしない配慮が必要です。とくに入職までの期間が長ければ長いほど定期的に話す機会を持てるとベター。入職日まで病院への入職意欲を保っておけると安心です。

内定後フォローには次のような方法があります。

(1)食事会の実施
お互いが都合のいい場所とタイミングを調整して、食事をしながら医師の近況を伺うほか、逆に自院の近況を伝えたり、入職に向けた自院の準備状況などを話したりする。

(2)アルバイトでの慣らし勤務
定期非常勤やスポットなどで、入職予定の現場で働く機会をつくる。医師やコメディカルとコミュニケーションがとれるので、入職後もスムーズに馴染むことができる。

(3)生活まわりのフォロー
転居を伴う場合は物件探しを手伝ったり、引っ越し業者を紹介したりする。そのほか、生活面の困りごとがあればできる限りのサポートを行う。

入職手続き:3カ月間、慣れるまで見守る

入職手続きは法人によって異なりますが、必要書類はもれなく準備するようにしましょう。

【必要書類の例】

・医師免許証(写)
・各種取得資格証
・源泉徴収票
・雇用契約書
・同意書 等

採用担当者がどこまで担当するかは法人にもよりますが、白衣のサイズ確認、医局の座席位置など、細やかな配慮もできているとベストです。

入職直後は、使っていた医療機器やコメディカルとの連携方法が違うなど、その病院のやり方に慣れるまでに一定の時間がかかるもの。医師の定着に気を配っている医療機関では、入職後3カ月は定期面談をしながら、困りごとを解決しています。そもそも医師の早期離職は、聞いていた条件と実際の業務内容が違うことが大きく影響しているとも言われています。面接や内定後の面談などでお互いに確認している部分ではありますが、入職してからもこまめにフォローできるとよいでしょう。

採用活動の振り返り:できていない部分を因数分解する

採用活動は定期的な振り返りをしたほうがいいですが、そこまで手の回っていない医療機関がほとんどです。ここでは参考として、紹介会社を使った採用活動に限定し、エムスリーキャリアが提供する採用アウトソーシングサービスで実施している振り返り方をお伝えします。

採用活動の振り返り方法

【振り返りの期間】
 2~3カ月に1回

【採用活動を振り返るための中間指標】
・提案数:医師に提案した求人の数(医師の母集団形成)
・面接数:医師との面接を組んだ数
・決定数:採用した医師の人数

これらの指標に合わせて、どこに問題があるのかを見ていきましょう。

・CASE1:提案数が少ない
この段階で数字が少ないということは求人票の魅力に欠けており、紹介会社のコンサルタントに情報が伝わっていないことが考えられます。医師採用の要は、母集団形成です。ここでは概要編vol.2でお伝えした採用戦略や求人票の作り方、概要編vol.3でお伝えした認知活動方法を今一度振り返り、ブラッシュアップを図ったほうがいいかもしれません。

・CASE2:面接数が少ない
医師への提案はしているものの面接までつながらない場合は、求人票に対して医師が魅力を感じていない可能性があります。この場合、競合にあたるような医療機関と比べた時に見劣りしている可能性が考えられるので、他院の求人票をリサーチしながら情報をアップデートできるといいでしょう。

・CASE3:採用数が少ない
面接は組めているが、採用決定に至らないケース。これは求人自体には魅力を感じているものの、面接での心証を害してしまった可能性があります。たとえば、自院の面接官が一方的に話しすぎていないか、高圧的になっていないかといった点を振り返ります。

上記のケースに対する改善案は、あくまでも一案。医療機関によって答えは異なるはずなので、自院の強みや弱み、採用活動の実態を把握しておけるといいでしょう。

そもそも医師1人を採用するには100人に提案しなければならないと言われています。とはいえ、数打てば当たるという簡単なものではないのが医師採用です。瞬時に解決できる策はないに等しく、常に採用戦略に立ち返り続けることが大切なのかもしれません。

<協力:浅見祐樹、福田拓良/取材・文:小野茉奈佳>

浅見祐樹(あさみ・ゆうき)
エムスリーキャリア株式会社 経営支援事業部 採用アウトソーシンググループ
法政大学卒業後、事業系NPO法人にて地域活性化や災害救援に従事。「現場が第一」をモットーに、地域ニーズに合わせた事業開発を行う。その後、エムスリーキャリアに入社し、医師採用のコンサルタントとして全国の医療機関を支援。現在は約130社の医師向け紹介会社と連携しながら、医療機関向けの採用支援サービスの開発・推進を担当している。※所属は取材当時
福田拓良(ふくだ・たくろう)
エムスリーキャリア株式会社 経営支援事業部 採用アウトソーシンググループ
早稲田大学卒業後、金融機関にて法人・個人向け融資、投資商品の営業活動に従事。エムスリーキャリアに入社後は、医師採用のコンサルタントとして全国の医療機関を支援。現在は採用アウトソーシングサービスのチームリーダーとして、メンバーのマネジメントを行いつつ、採用支援サービスの開発・推進を担当。※所属は取材当時
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