医師の働き方改革が議論される中、他職種へのタスクシフティングの重要性がますます高まっています。2024年4月以降、医師に対しても時間外労働の上限規制を適用されるため、医師の勤務時間短縮は医療機関にとってマスト。残業代抑制の観点からも、医師でなくてもできる業務は他職種へ移管していく動きが求められているのです。しかし、現状では他職種への業務移管は限定的になっているようです。編集部では、m3.com会員を対象に医師の働き方改革に関するアンケートを実施。医師1213名の回答から、タスクシフティングが進まぬ理由を考えます。
目次
タスクシフト未実施の理由、最も多いのは
タスクシフティングが進んでいる業務・進んでいない業務は具体的にどのようなものなのでしょうか。勤務先でのタスクシフティングの実施状況を聞いたところ、半数以上の医療機関で「静脈採血」「患者の移動」「静脈ラインの確保」「静脈注射」に関しては業務移管が進んでいることがわかりました(図1)。
一方で、「初療時の予診」「診断書などの入力」「処方された薬剤の変更」などは、「未実施」が「実施中」を上回る結果となりました。
それでは、未実施の項目については何がボトルネックになっているのでしょうか。「未実施」の理由を聞いたところ、約3割が「人員の確保が困難」を挙げました(図2)。次いで、約4人に1人の医師は「院内調整が困難」と感じているようです。また、「進め方がわからない」という意見も1割以上あることから、フローの整理・可視化に着手できていない施設も一定数ありそうです。
他職種との調整、ローカルルール…タスクシフト阻む壁
施設規模・形態別の傾向も見てみましょう。病院の中でも、200床未満の小規模病院では特に人員確保・院内調整に苦労しているようです(図3)。限られた人員の中で、業務をいかに棚卸し・効率化できるかがカギとなりそうです。一方で、クリニックではノウハウ不足や、患者対応の質が低下することを懸念する声が比較的多く見られます。既に実施している医療機関の例を参考にするなど、まずは情報収集から始める必要があるでしょう。
他職種へのタスクシフティングで苦労したことについては、多くのコメントが寄せられました。その一部をご紹介します。勤務先での実施時のご参考にしていただければ幸いです。
他職種との折衝
- 他職種が非協力的
- 看護師が採血をしてくれない、ルートを取らない
- 他職種からも仕事が増えると拒否された(フェソロデックス筋肉注射)
- シフトできないので苦労もありません(悲)。面倒なことや嫌なことは全部医師に丸投げです
- 看護師との仕事の線引きに関する話し合いが進めにくい
- どの職種も仕事が一杯でシフトできる余裕がない
- 過去に看護師などがやってトラブルがあると、医師の業務となりがち
- ケモラインの確保は医師がやることになっているが、外来の合間やオペの合間に行わなければならず、待たせることが多い。その結果投与が遅れ看護師の残業にもつながる。ライン確保を看護師が行うよう提案も何度か行なっているようだが何故か話がすすまない
- 医師は患者のアウトカムを最良にするべく全力を尽くす一方で、少なくない他職種は自分の仕事を最小限にすることに全力を尽くす。全く違う方向を向いているので、チームとして機能しようもない病院も少なくない。一方、医師としての姿勢を背中で示し続ける事で、医師以外でも出来ることは全て他職種が積極的にこなしてくれるようになった病院もあった。結局、人材こそが財産だと思う
他職種の教育
- コメディカルへの教育の必要性!
- 人はあてがわれても業務内容に問題ありかなり不十分+修正が必須で手間が減らない一方書類が遅いといわれて……
- 間違いなく実行してもらうためのトレーニング。個々に能力が異なるため一律にお願いできない
- とにかく何か新しい業務を依頼すると、「責任は?」というところから議論が毎回スタートし、やりたがらない
- 病棟業務は慣れていない看護師を育てるところから始まる。事務も、医事課職員と医師の認識のすり合わせから始まる。最初は負担が多い
慣習
- 経営陣の理解を得られないと実際にシステム変更は難しい
- ローカルルールの変更は困難を極めます
- 施設の長く続いた慣習の打破
その他
- 人事異動が頻繁
- 事務の方の入れ替わりが激しいため、適応するために時間が必要となっています。そのために、業務移行は難しくなっています。業務改革が進んで行くことで離職する方も増えております。これが大きな原因となっています
- 情報共有と個人情報管理のバランス(セキュリティ面も含めて)
- 人件費の削減
- 患者からのクレーム
- 職員採用にかかる人件費の捻出
【調査概要】
医師の働き方改革に関するアンケート調査:2020年11月18日~26日、m3.com医師会員を対象に実施。
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