コロナ禍ならでは?医師の転職活動期間に変化―求人天気予報2021年4-6月期

コロナ禍の影響から、徐々に抜け出しつつあった2020年1~3月。半数以上の都道府県で求人倍率・想定年収が上昇する一方で、上昇幅は小さくなっており、採用市場が活発化していることが読み取れました。新年度に入った2021年4月以降の市場傾向はどうなっているのでしょうか。編集部では2021年4~6月にかけて、m3.comCAREERに寄せられたデータをもとに都道府県と各科の求人倍率と想定下限年収を集計。直近3カ月の市場動向と、コンサルタントによる今後の見通しをお伝えします。

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目次

図1:2021年4~6月におけるエリアごとの求人倍率と想定年収の平均額(下限)
図1:2021年4~6月におけるエリアごとの求人倍率と想定年収の平均額(下限)

4~6月の転職市場は引き続き安定傾向に

2021年の1~3月と4~6月で比較した、エリアごとの動向は上図の通りです。求人倍率は求職者1人あたりの求人数のため、高ければ高いほど、競合となる施設が多いことを示しています。また、想定年収の下限額の平均値(以下、想定年収)は、医療機関が提示している最低年収の平均です。実際は、経験やインセンティブによって金額がアップします。

まず、エリア別の傾向を見てみると、想定年収の上昇幅が最も大きかったのは東北地方でプラス14万円、下降幅は九州・沖縄のマイナス12万円が最大でした。金額の上下の幅は小さく、市場は安定傾向にあると見られます。求人倍率は、医療機関の採用ニーズが増す1~3月期に比べるとやや落ち着いているものの、東北・中部①・中国・四国エリアでは6倍以上と高い水準になっています。

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採用ニーズはやや落ち着く一方、6割の都道府県で想定年収が上昇

続けて、都道府県ごとの傾向を見ていきましょう。

図2:2021年4~6月における都道府県ごとの求人倍率と下限年収(平均値)
図2:2021年4~6月における都道府県ごとの求人倍率と下限年収(平均値)
※赤字:前回(2021年1~3月)から上昇した項目

1~3月に比べ求人倍率が上昇したのは、全国で13自治体でした。医療機関の採用ニーズが高まる1~3月期には約半数の自治体で求人倍率が上昇しましたが、新年度に入りニーズはやや落ち着いているようです。コロナ禍が再拡大している影響で、一部の医療機関で“採用控え”が起きていることも一因かもしれません。

一方で、想定年収は25自治体、半数の自治体でアップするなど前回に引き続き上昇傾向が目立ちます。上昇幅が最も大きかったのは佐賀県でプラス91万円でした。図2からは、求人倍率・想定年収が必ずしも連動しているわけではないことがわかります。競合施設が減っているエリアでも、想定年収は高騰している可能性もありますので、医師採用を検討する際はしっかりエリア内の相場をリサーチすることをおすすめします。

※1 求人倍率・下限年収(平均値)ともに上昇した地域
青森県、秋田県、東京都、福井県、島根県、山口県、高知県、鹿児島県

※2 求人倍率・下限年収(平均値)ともに下降した地域
北海道、宮城県、山形県、茨城県、群馬県、千葉県、神奈川県、長野県、
静岡県、愛知県、京都府、鳥取県、広島県、香川県、愛媛県、宮崎県、沖縄県

外科系は再び想定年収アップへ…診療科別の傾向は?

続けて、診療科別の傾向を見てみましょう。

2021年4~6月における診療科ごとの求人倍率と下限年収(平均値) ※赤字:前回(2021年1~3月)から上昇した項目
★図3:2021年4~6月における診療科ごとの求人倍率と下限年収(平均値)
※赤字:前回(2021年1~3月)から上昇した項目

診療科別で求人倍率が上昇したのは糖尿病系・精神科系の2領域のみで、やはり上昇が目立った1~3月に比べ、どの診療科でも比較的落ち着いています。一方で、想定年収は約半数の領域で上昇しており、特に皮膚科系は前回に引き続き上昇幅が最も大きく、プラス93万円となっています。また、前回は下降幅の大きさが目立った外科系がプラス27万円と再び上昇傾向に転じています。

※3 前回に引き続き、想定年収が増えている診療科
皮膚科系、眼科、脳神経系、リハビリテーション科、麻酔科、糖尿病系

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コロナ禍により転職期間は長期化へ…早めの情報収集が鍵に

これまでデータで見てきた医師・医療機関を取り巻く転職市場動向について、エムスリーキャリアで医師の転職支援にあたるコンサルタントに聞きました。

求職者の動向

「昨年同時期と比べて、登録者数は122%と全国的に転職を検討される医師が増えています。今年度の特徴としては、次年度の入職を希望される先生が例年よりも多い点にあります。特に40代までの若手~中堅医師にその傾向が強くなっています。コロナ禍の影響により、年度内に現職を辞めることが難しく、転職検討~入職に至るまでの期間が長くなっていることが背景にあるようです」(医師転職支援コンサルタント)

医療機関の動向

「クリニックは、昨年度に採用活動を控えていた施設が募集を再開したり、新規開設に伴い募集したりするケースが増えています。中でも、コロナ禍で患者からのニーズが増している訪問診療クリニックは、引き続き人手不足で採用に取り組むところが多い印象です。

一方で病院に関しては、昨年度から大きな変化はありません。都市部の急性期病院ではコロナ禍の影響で採用控えが続いており、求職医師の増加も背景に現在は買い手市場となっています」(前出のコンサルタント)

診療科別の動向

「4~6月で見ると、外科系のほか、眼科や耳鼻咽喉科、小児科などのマイナー科目での募集が増えました。1~3月に募集が落ち込んだリハビリテーション科も、大きく募集が増えて例年程度の水準に持ち戻しています」(前出のコンサルタント)

2021年7~9月の見通し

「2020年度を振り返ってみると、4~6月に最初の緊急事態宣言の影響で求職者・求人いずれも動きが鈍化し転職市場は停滞しました。7~9月には、その反動で求職者・求人が大幅に増加し、例年の同時期では類を見ない採用数となりました。

2021年は昨年度ほどの盛り上がりは見られないものの、4~6月の堅調な動きが継続されると見込んでいます。ただ、ワクチン接種の広がりで転職を希望する医師も求人も増える可能性があり、今後の注目ポイントでしょう」(前出のコンサルタント)

医師の採用市場は1~3月から安定傾向にありますが、コロナ禍の収束状況などにより、競合施設の多寡や条件面は少なからず影響を受けそうです。 エリアや診療科によっても影響の度合いは差があるため、医師採用をご検討の場合は、採用市場の動向や求職者のニーズの変化など早めに情報収集を行い、計画的に採用活動を進めることが大切です。

【調査概要】
2021年1月~6月にm3.comCAREERおよびエムスリーキャリアエージェントに掲載されていた求人約15,000件の情報のほか、エムスリーキャリアの人材紹介サービスに登録している求職者の情報を統計処理

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まず大切なのは、自院の立ち位置を把握し、競合と差別化できる
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  1. 宮田主任

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