「戦略の春!」2020年度 医師採用の成否は今夏に決まる!?ー医師採用コンサルタント対談


2019年度を過ぎたばかりの今こそ、2020年度の医師採用に向けて動き出す必要があるーー。そう提言するのは、エムスリーキャリアで医師の採用支援を担う吉田力哉氏と柳牛寛行氏(ともに採用OSグループ)です。
医療関係者からの「目の前の仕事で手一杯だ」という声が聞こえて尚、今夏までの医師採用活動が重要だと力説する両氏に話を聞きました。

戦略の春とは?

―まだ5月ですが、もう来年度の話ですか?
吉田力哉氏:
はい。4月は入職される医師が多い月です。5月を迎えた今、理事長や院長、事務長、あるいは、採用担当者といった採用責任者は、次の4月、つまり2020年度を視野に入れた活動が必要になってきます。

柳牛寛行氏
弊社に登録をされる医師について登録時期の統計をとってみました。それによると、年度で最初に登録が多くなるのが夏の賞与のタイミングで7月から8月です。このタイミングでは夏季休暇もありますので転職についてより深く考える時期でもあります。この時期にどれだけ濃い情報を届けられるかが肝になってくるということです。

柳牛寛行氏

―夏には情報が必要ということですね。
吉田氏:
その通りです。医療機関は夏までに様々な情報を精査して発信していかなければなりません。求人票にあるような「当院規定による」や「要相談」といった不透明な表現は避け、転職を検討している医師がイメージ可能で、興味をもってもらえるような求人票を作りこむ必要があります。

柳牛氏
そこで「戦略の春」なんです。経営の方向性や採用戦略を今の時期に考えておかなければ、あっという間に夏がきてしまいます。今まで通りの採用活動をしていても今まで通りの結果しか生まれません。来年度の医師体制を見据え、入職→面接→募集→戦略と逆算をする必要があり、春がその時期なのです。

―戦略といっても具体的には?
柳牛氏
まずは経営の方向性です。どのような機能を持ち、どのような患者様にどのような医療を行うべきか。これについて改めて考える必要がありますね。

吉田氏:
これについて、現状分析という視点で病院内部の外来・入院患者の調査を行うこと、将来の検討という視点で外部環境の調査を行うことが一般的です。
その結果を踏まえて、できることを取り組むということで経営の方向性を日々練っている医療機関が多い印象ですね。弊社では悩みを抱えている先生からのご相談を日々受けている病院経営支援グループという部署があります。当部署では事業計画(マスタープラン)の無料作成支援を行っているようですね。我々も医療機関からの経営相談については彼らに助けてもらっていますね。

柳牛氏
経営の方向性が固まってくると、それに合わせて採用戦略が決められると思います。どの科目にどういう医師が必要なのか、狙うべきターゲット像が具現化できると採用活動も変わってくると思います。

吉田氏:
例を挙げると、医師の高齢化に悩む医療機関の求人票や人事制度を拝見すると、給与規定が年齢や経験年数によって定められており、若手医師の待遇があまり良くないパターンがあります。若返りを図りたいのに若手に対して待遇が良くなく、制度上高齢の医師の待遇が手厚くなってしまっている。若手医師がこのような病院に魅力を感じるでしょうか。このようにターゲットと制度の矛盾が多く見られますが、これに違和感を持っていない医療機関の採用担当者は多いです。

吉田力哉氏

忙しい時期だからこそ…

―採用担当者にとって春先は忙しい時期だと思いますが

柳牛氏
そうだと思います。でも一方でこの時期にしっかりと準備をしておくと夏から秋にかけてより効率的な動きが出来ると考えています。場合によっては夏や秋などの今年度内入職も夢ではありません。採用担当者にとって暇な時期はありませんが、かと言って医師の採用活動に注力しないというわけではないと思います。

吉田氏:
「ちょっとバタバタしていて……」や「なかなか手がまわらなくて……」と言われることが非常に多いです。でもそれは単なる言い訳で、医療機関にとっては機会損失そのものです。

戦略以外にも大切なことは?

柳牛氏
前述の通り経営の方向性などを定めることも大切ですが、それと同じくらい大切なのが分析です。今の給与規定の根拠は何なのか、近隣の相場と比べてどうなのか、転職市場のなかでしっかりと訴求できているのか、それぞれの医療機関の立ち位置を明確にする必要があります。まさに「敵を知り己を知れば百戦危うからず」です。

吉田氏:
分析には、紹介会社を利用する手があります。たとえばエムスリーキャリアでは全国的な給与相場の統計データも提供していますし、エリアや診療科ごとの傾向についても独自の調査をしています。採用アウトソーシングサービスでは私が採用戦略セミナーを開催していますのでぜひご参加ください。

前述のマスタープランについて

―マスタープランとは?
吉田氏:
エムスリーキャリアは医師の紹介・採用に関するイメージが強いかもしれませんが、実は病院経営への包括的なサービス提供もしています。
具体的には、事務職の紹介、地域包括ケア病床への転換支援、経営戦略の策定から実行までの一貫支援です。医療経営はまさに「言うは易く行うは難し」の連続ですが、多くの医療機関とお取引をしている弊社だからこその支援が可能です。

柳牛氏
病院経営支援グループでは病院経営について様々な経験やノウハウを持ったプロがマスタープランの作成を担当するのでぜひご相談ください。
採用セミナーもこの時期だからこそ非常に良いインプットになると思います。今春の戦略が来春の勝敗を分けるのです。

吉田 力哉(よしだ・りきや)
エムスリーキャリア株式会社 医師キャリア事業部 採用アウトソーシンググループ
茨城大学人文学部卒業後、モバイルコンテンツ制作会社に新卒入社。アプリ企画部を経て営業部に配属され、西日本の地場代理店や商社系・メーカー系の大手代理店を担当。
その後エムスリーキャリアに入社し、医師採用コンサルタントとして全国の医療機関の採用を支援。現在は採用アウトソーシングサービスの営業責任者として営業全体の指揮や戦略の立案を行う。
柳牛寛行(やぎゅう・ひろゆき)
エムスリーキャリア株式会社 医師キャリア事業部 採用アウトソーシンググループ
関西外国語大学外国語学部英米語学科卒業後、水道インフラのメーカーに就職し、営業職を経て海外事業部に配属され営業管理職としてベトナム・ホーチミン市に駐在。
その後、エムスリーキャリアに入社し、医師採用コンサルタントとして全国の医療機関をクライアントに持つ。「戦略的な医師採用」をモットーに、医療機関にとって本当に必要な医師を様々な角度から分析し、採用活動を支援。

<協力:吉田力哉、柳牛寛行/編集・写真:塚田大輔>

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