特定集中治療室(以下、ICU)での多職種による早期離床・リハビリテーションの取り組みを評価するために「早期離床・リハビリテーション加算(500点/1日、14日限度)」が特定集中治療室管理料の「注4」に設けられました。この加算は配点も大きく、新たなチーム医療としても注目されており、今回は同加算について解説します。
実施の差が目立つ、高度急性期でのリハビリテーション
そもそも中央社会保険医療協議会(中医協)の議論の中で、特定集中治療室における早期離床リハビリの効果には、次の2つが取り上げられました。
1.早期からの離床を取り組んだ場合、歩行までの期間の短縮など効果がみられている。
2.プロトコルに沿った離床に向けた取り組みを行うことによって、「離床までの日数」、「ICU在室日数」、「病院在院日数」は有意に減少することが明らかになっている。
出典:中央社会保険医療協議会(中医協)資料
これだけを見ると、主に在室・在院日数の短縮が図られているように見えるかもしれませんが、この効果を生む医学的な視点は、「早期離床+早期からの積極的な運動(リハビリ)の実施」と捉えられています。したがって、この加算には、正しい基準に則って臨床的にアプローチする早期リハビリの仕組みを、高度急性期にも導入する狙いがあるのです。
実際に、下記の資料を見ると、高度急性期機能(救命救急、ICU、HCU)を有する病棟での術後リハビリは、実施状況にかなりのバラツキが見られます。そう考えると、今後は高度急性期病床の早期リハビリに、より意識を向けるべきなのでしょう。
出典:中央社会保険医療協議会(中医協) 平成29年度入院医療等の調査
評価の肝は、入室時48時間以内に専任チームが介入すること
続いて、早期離床・リハビリテーション加算の施設基準を見てみましょう。詳しくは告示を参照していただくとして、実施条件を要約すると次の3項目になります。
- 専任チームの設置(基準を満たす医師・看護師・理学療法士)
- 入室後48時間以内に介入し、当該チームの計画書の作成と定期的な評価
- プロトコルの整備と定期的な見直し
この施設基準条件を運用に落としていくと、入室時48時間以内に当該チームによるリハビリ実施の判断と計画書の作成が求められます。このような場合、日々のベッドサイドカンファレンス等、専任のチームメンバーが必ず集まる機会を調整しなければなりません。なぜなら、この加算は専任のチームメンバー以外の対応を認めていないからです(現在公表されている疑義解釈には記載がないため、筆者が関東信越厚生局に問い合わせ済み)。
この他にも、疾患別リハビリテーション料の同時算定は出来ないとされており、通常のリハビリとの選別を行う必要があります。ただし、ここで重要な点は、早期離床リハの加算は、疾患別リハとはまったく別の概念として設定されていること。同時算定が不可なのは、患者の状態や臨床経過に応じて、疾患別リハへの算定切り替えを想定しているからなのでしょう。
そのため筆者が勤務する医療機関では、入室時計画書を、1.早期離床・運動介入、2.摂食・嚥下訓練、3.脳卒中リハビリテーション、4.急性心筋梗塞リハビリテーション、5.急性大動脈解離リハビリテーション、6.抜管・人工呼吸離脱プロトコル、7.排痰・呼吸リハビリテーションの7つに分け、実施項目をチェックするかたちで作成しました。
運用面ではICUとはいえ48時間以内の縛りが非常に厳しいところで、週末やスタッフの休みなどでチームが集合できない場合は、そもそも算定できないものとして諦めています。一方で、チームメンバーの専任要件に関わるところは、まだまだ見えない部分も多いです。ですから、まずは施設基準の届出をして、算定要件が確実に整うときに加算が取れるよう注意して進もうと考えています。これからの疑義解釈に注視しましょう。
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国立研究開発法人 国立国際医療研究センター医事管理課長/診療情報管理室長、国際医療福祉大学院 診療情報管理学修士。1987年、財団法人癌研究会附属病院に入職後、大学病院や民間病院グループを経て現職。その間、診療情報管理士、診療情報管理士指導者などを取得。現在、日本診療情報管理士会副会長、日本診療情報管理学会理事、医師事務作業補助者コース小委員会 委員長などを務める。
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