在院日数の引き伸ばしは禁じ手に 病床稼働対策は正攻法の時代へ―診療報酬請求最前線

診療報酬請求最前線

前回は平均在院日数について取り上げましたが、今回は医事課に重要な視点でもある、病床稼働の指標とそのマネジメントについて考えてみましょう。

何が違う?「病床稼働率」と「病床利用率」

病院収入を見る指標のひとつに「病床稼働率」があります。これは、自院の病床がしっかりと埋まっていたのか、入院患者によってどのくらいの割合の病床が満たされていたのかを示す指標として用いられます。いわゆる入院ベッドの運用状況を見るための尺度とも言えるでしょう。

年単位で算出するときの計算式は、次の通りです。

病床稼働率(単位:%)=(年間在院患者延数+年間退院患者延数)÷(運用病床数×365)×100

※運用病床数は、稼働病床数ともいう。

一方、病床稼働率と類似した指標が「病床利用率」です。こちらは厚生労働省が、主に公的医療機関の経営状況を見るときに使用しています。

年単位で算出する場合、その定義は、次のようになります。

病床利用率(単位:%)=年間在院患者延数÷(運用病床数×365)×100

両者の違いは、「病床稼働率」が24時時点の在院患者数に当日の入退院患者数をプラスしているのに対し、「病床利用率」は24時時点の在院患者数のみを合計していること。「病床稼働率」の場合、同日入退院がある病床は2名と計算されるので100%を超えることもあります。つまり、病床運営の実態に沿う指標としては「病床稼働率」のほうが有効なのです。

※2018/10/4 病床稼働率を説明している箇所で「当日の退院患者数をプラス」を「当日の入退院患者数をプラス」に修正しました。

病床稼働率なら入退院の動きも把握できる

筆者の医療機関では、この指標に加えて、ひとつのベッドで午前退院・午後入院ができた病床を「同日入退院率(割合)」として算出し、月単位でその推移を見ています。

場当たり的な「在院日数の引き伸ばし」に頼らない

病床に関する指標は、平均在院日数との関連性がとても強いため、病床稼働率の低下を平均在院日数の延長によって補う医療機関も少なくありません。このとき「在院日数の引き伸ばし」という表現が使われますが、そもそもこれは適切な病床マネジメントとは言えません。

今回の診療報酬改定でも、入院基本料は重症度・医療・看護必要度の実績要件が細分化し、より厳格化が図られています。中でも急性期を担うDPC制度下では、暫定調整係数の機能評価係数Ⅱへの切り替えが終わり、この係数のひとつでもある「効率性係数」(在院日数短縮の努力を評価する指標)の点数配分が大きくなっています。要するに、病院側の都合で入院期間を延長することに、広くメスが入っていると考えても間違いではありません。

とはいえ、実際に病床稼働が低迷したときは何かしらの対策をしなければなりません。このとき、場当たり的な対応でごまかさず、将来性を考えた正攻法でいくべきではないでしょうか。

筆者が考える病床稼働対策は、新患を増やすこと、中でも入院につながる初診患者を増やしていくことだと思っています。そのためにも第一には病院機能や医師の専門性、地域性を明らかにして、自院はどんな初診患者を求めるのかをはっきりさせることが必要ではないでしょうか。

そのような前提条件を明らかにしたうえで、病床稼働率を安定させるには救急患者の緊急入院に偏ることなく、予定入院を増やし、季節的な変動を乗り越えることが大切であるとも実感しています。

昨今は地域包括ケアが推進され、医療機関の機能分化が進んでいることも勘案すると、病院間の連携が重要な意味を持つようになるでしょう。機能分化とは、病院機能の方向性に沿った診療体制を示すことでもあるので、病院機能に沿わない場合は転送や転院、逆紹介への必然性が出てきます。これらを整備することで、病院機能がより明確になり、紹介患者が増えるなどの相乗効果も期待できるのではないでしょうか。

<編集:小野茉奈佳>

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