インナーメーカーで法人営業を行いながら、新規ブランドの立ち上げに携わる。少子高齢社会において、社会にインパクトを与える仕事に携わりたいとエムスリーキャリアに入社。全国の病院で、地域包括ケア病棟算定後の運用支援や看護師の採用支援を行う。
2014年の診療報酬改定で新設された「地域包括ケア病棟」。時代の流れに合わせ、病棟の届出は増えていますが、今なお導入に二の足を踏む病院も少なくないようです。
また、導入を考える背景や想定される問題点も病院ごとに異なります。
地域包括ケア病棟への病床転換という、一大プロジェクトを成功させた病院の実例をご紹介する本シリーズ。今回はリハビリ編として、病床転換を行った2病院を取り上げます。
地域包括ケア病棟でチェックすべきリハビリ要件
地域包括ケア病棟入院料でリハビリテーションに関係する施設基準は、大きく3つに分けられます。
(1)人員
・理学療法士、作業療法士、言語聴覚士 常勤1名以上の配置
※ 疾患別リハビリテーション等の専従者との兼務は不可
(2)届出
以下のいずれかを届け出ている。
・心大血管疾患リハビリテーション料(Ⅰ)
・脳血管疾患等リハビリテーション料(Ⅰ)(Ⅱ) (Ⅲ)
・運動器リハビリテーション料(Ⅰ)(Ⅱ)
・呼吸器リハビリテーション 料(Ⅰ)
・がん患者リハビリテーション料
(3)提供単位
・上記リハビリテーションを提供する患者において1日平均2単位以上を提供している
これらの要件は、数こそ多くないものの、クリアするのに苦戦する病院は少なくありません。
次項ではリハビリにハードルを感じていながらも、そのハードルを乗り越え病床転換に成功した2施設へのインタビューをご紹介いたします。
実例1:リハビリ室がなく、改修費用もない
A病院(急性期10:1・100床未満)
機能訓練室(リハビリ室)がない状態から、地域包括ケア病棟への転換を推進したのが事務長代理Tさまです。病床転換の経緯を次のように話してくださいました。
事務長代理 Tさま
「リハビリを始めようにも、施設基準を満たす部屋がなく、リフォーム費用も捻出する余裕がないので、地域包括ケア病棟への転換は諦めていたんです。しかし、エムスリーキャリアのコンサルタントから、機能訓練室は院内の離れた場所でも合算できると教えてもらえたので、じゃあやろうと決めました。
やると決めてからは、リハビリスタッフの採用と施設基準管理を同時並行で進めました。今まで自分たちから積極的に呼びかける採用はしてこなかったのですが、人材紹介会社も活用しつつ、PR資料の作成やホームページの改善などをしたら、運良く立ち上げに協力的な方が入職してくださいました。ここで学んだ採用ノウハウは、導入後の今も看護師採用などに生きていて、良い経験になりました。
施設基準管理では、機能訓練室を用意するために、物置状態だった部屋を片付け、診察室を移したりもしました。しかも保健所への用途変更の届出など、行政手続きも多く、スケジュールは非常にタイトでした。全体の指揮・管理が重要になってきますが、当院では事務部が主体となり、これらを進めることができました」
事務部が主体的に動くにあたり、ポイントとなったことも伺いました。
「リハビリができると分かってから、エムスリーキャリアに病床転換前後の収支シミュレーションを出してもらったんです。その結果、患者数は変わらずに増収が見込めたので、転換を進める明確な根拠ができました。それで、事務側から院長や看護師などに転換を呼びかけました。
それから、現場スタッフの協力も不可欠ですから、反対されないように腐心しました。たとえばデータ提出加算のソフトを追加するときは、現場で働く人たちの仕事に大きな影響がないように気をつけましたね」
実例2:提供単位をクリア・維持できるか?
B病院(急性期7:1・150床未満)
地域包括ケア病棟は導入してからが本番。出来高算定の頃とは違うリハビリ提供のあり方に、不安を感じるケースもあります。
リハビリテーション室長 Iさま
「25年以上も当院でリハビリを担当してきましたので、病床が変わるといってもリハビリの内容や患者さんへの影響はそれほど心配していませんでした。それよりも、地域包括ケア病棟の施設基準である“1日平均2単位”(1単位=20分)を満たせるかどうかは、いつも不安でした」
このような不安を抱くのも無理はありません。施設基準を満たせなければ、病院全体に影響が出ます。とはいえ、B病院は十分にクリア可能な体制であったため、十分なリハビリを提供するために運用ツールを活用しました。
リハビリテーション室長 Iさま
「まずリハビリ実績が施設基準を満たすか分かるように可視化しました。それと併せて、患者さん一人ひとりの入院期間を想定し、そこから逆算してリハビリに取り組むようにしました。ポイントは、『残りの入院期間を想定し、今後1日あたりに何単位必要か』を試算することです」
こうした運用面の不安をクリアし、現在では部門一丸となってリハビリに取り組めているそうです。
リハビリテーション室長 Iさま
「病床転換は大きな変化でしたが、病床が変わったからといって慌てずに、目の前の患者さんと向き合うことにしました。患者さんへの接し方を変えなかったことが功を奏して、転換後も混乱なく患者さんに退院してもらっています。
地域包括ケア病棟の退院とは、つまり在宅復帰です。そのゴールのために我々は活動できています。患者さんに『最低限一人でトイレに行ける』『可能であればヘルパーを利用してでもお風呂に入れる』状態になってもらうという具体的な目標を掲げ、目指しています」
おわりに
先の2施設のインタビューをご覧になり「当院のことだ……」と思われた方は少なくないのではないでしょうか。実際、弊社のご支援先で同様のパターンは何件もございます。
「当院の場合はちょっと似ているが、また違った問題があって……」「当院のリハビリでは、2施設の例とは全く異なる問題があるのだが……」など、転換したい気持ちはあるもののなかなか進められないという状況がありましたら、まずはお気軽に弊社までご相談ください。
https://hpcase.jp/chiiki-seminar/
<編集:塚田大輔>
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