2020年~21年度にかけて、厳しい見通しにある医師採用。医療機関はどのような課題を抱えているのでしょうか。また、採用活動時のコミュニケーションについても、医師と医療機関の間で意外なギャップが生まれているようです。
エムスリーキャリアが実施した常勤医師の採用活動に関するアンケート調査では、医師(経営層)を中心に345名が回答、また転職活動について医師409名が回答しました。調査結果から、採用活動時の注意点をご紹介します。
目次
- 採用課題トップは、「マンパワー不足」
- 「アピール不足」「コスト削減によるブレーキ」…それぞれの採用課題とは
- 求職中医師が「知りたいのに知ることができない」と思っている項目は…?
- 「情報開示」「疑問・不安の払しょく」の捉え方、医師と医療機関の間に大きな溝
- Web面談、体験当直…採用時に工夫していること
採用課題トップは、「マンパワー不足」
採用課題を尋ねたところ、1位「マンパワーが足りない」、2位「コストをかけられない」とリソース不足に伴う悩みが上位を占めました(図1)。また、「院内の協力体制が足りない」「経営層の採用意欲が高くない」がそれぞれ1割と、院内の合意形成に課題を感じている医療機関が一定数あることがわかります。
規模別の比較を見てみましょう。300床未満の中小病院は、「課題は感じていない」と回答した割合が最も少なく、診療所や大病院に比べ「課題に感じている」と回答した項目が最も多くなっています。中でも、「認知度が足りない」「採用計画がない/おおざっぱ」に関しては、診療所や大規模病院に比べ突出して多いことがわかります。一方で、大病院ではアクセスや院内の協力体制などに課題がありそうです。診療所は、「マンパワーが足りない」と回答した割合は少なく、コストや福利厚生の充実など、費用面で悩みを抱えることが多いようです。
「アピール不足」「コスト削減によるブレーキ」…それぞれの採用課題とは
そのほか自由記述で、課題と感じている具体的な内容は以下の通りです。
- アピールが足りない
- コスト削減によるブレーキが課題
- 採用担当者が現場を見ていない
- 駅から遠くアクセスが車になる事だと思います
- 立地だけは変えられないので苦戦
- 給料がよいとはいえない
- 能力給が、ほとんど無い
- スペースが足りない
- 高い採用経費のため、ダメな医師を切りにくい。3か月以内でだめなら採用経費ゼロの契約がしたい
- 公的病院のため融通は利かない点がある
- 人事に関しては医局まかせなので、受け身の状態である。
- 大学医局の要請により人員が減ったり増えたりする。常に同じレベルを維持するのも困難
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求職中医師が「知りたいのに知ることができない」と思っている項目は…?
次に、採用活動時の医師とのコミュニケーションについて、調査結果をもとに考えてみます。医師が転職時に「知りたいと思っている情報」と「知ることができた情報」のギャップを示したグラフが図3です。特にギャップが大きいのが、「院内の人間関係」と「看護師など他職種の雰囲気」「所属医師の雰囲気」となっています。求職者は一緒に働く医師・スタッフの雰囲気や人間関係について、強い関心を寄せているものの、転職活動の過程でそうした情報を入手できる機会が少ないことがわかります。こうした内容について情報提供を行うことが、求職者の不安払拭につながるかもしれません。
続いて、医療機関が「提供している」情報と、転職経験医師が「知ることができた」情報のギャップを見てみましょう。特に両者のギャップが大きかった項目は、「求める医師像」「入職後のキャリアステップ」「地域における立ち位置」という結果になりました(図4)。医療機関側が伝えているつもりでも、求職者に伝わっていない可能性が示唆されています。こうした項目は医師が入職するか否かを判断する上でも重要な情報ですから、求職者とのやりとりや、面談・面接の中で明確に伝えておきたいところです。
それでは、医療機関は選考時に求職者のどのような点を重視しているのでしょうか。図5を見ると、「コミュニケーション力」や「所属医師・スタッフとの相性」など、既存職員と協調姿勢がとれるかどうかを評価する傾向が強いようです。求職者が医療機関の雰囲気を把握する上でも、医療機関が医師の適性を見極める上でも、同僚医師やコメディカルとの面談などが有効と言えそうです。
「情報開示」「疑問・不安の払しょく」の捉え方、医師と医療機関の間に大きな溝
伝える内容だけでなく、伝え方についてはどうでしょうか。コミュニケーションの取り方は、求職者にとって医療機関の印象を左右します。図6は、選考時のコミュニケーションについて、転職経験医師と医療機関の捉え方が異なっていることを示しています。特に、情報開示と疑問・不安解消については、求職者と医療機関で2倍近いギャップがあることがわかります。ネガティブな情報の開示や疑問・不安の払しょくなど、求職者が言い出しにくい内容は積極的に医療機関から問いかけるといった姿勢が求められるのかもしれません。
Web面談、体験当直…採用時に工夫していること
最後に、医師採用において各々工夫している点を自由記述で聞きました。医師採用にお困りの医療機関は、参考にしてみてはいかがでしょうか。
- 求職は広く募集を掛けているので、いろいろなつてで入職している。最近は退職医師の紹介で人員を補充できた
- Web面談実施
- 改善に向けて、法人の事務職が実権を握っているのを打破しつつある
- 施設状況を丁寧に説明する事だと思います
- 出来るだけ人柄が良い医師を取るようにしている
- 体験当直などを行なっている
- 二回は会うようにしている
- 良く説明会などを開催して、病院をPRしている
vol.1:常勤医師の採用見通し、約6割が「厳しい」その理由とは
【調査概要】
転職活動に関するアンケート調査:2020年6月16日~27日、m3.com医師会員を対象にエムスリーキャリアが実施。
採用活動に関するアンケート調査:2020年6月27日~7月4日、m3.com医師会員を対象にエムスリーキャリアが実施。
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