スタッフの反発や部下の指示待ち…組織づくりの困難、どう乗り越えた?─若手事務長キャリア座談会vol.2

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事務長として医療者や職員を束ねていくうえでは、様々な困難がつきもの。特に、“ヒト”にまつわる悩みはつきません。信頼関係の構築や、指示待ちの姿勢をどう変えるか、意見が対立した時に相手の理解をいかに得るか…。事務長歴3年以内と若手ながら、それぞれの組織に変革を起こすべく奮闘している4名に、スタッフへの働きかけ、また自身や組織の変化について聞きました。


スタッフの不信感や不安…払しょくするには

──皆さん事務長になられてから3年以内ということで、いろいろご苦労や発見もあったのではないでしょうか。印象的だった出来事や、組織の変化を感じた場面があれば教えてください。

加藤:
私が入職したのは、ちょうど病院がリニューアルするタイミングでした。病院のコンセプトや組織体制が大きく変わる過渡期で、急に外部からきた私に対して不信感を持つ方も、当然いたと思います。その中で、自分はどの立ち位置をとるべきか、当初はすごく悩みました。でも、組織としてのベースが整っていくにつれ、対立せずしてスタッフを進むべき方向に導くというか、相手からの理解を得るための努力を以前よりはできるようになったと思います。組織のフェーズによって優先事項は変わるので、仮に今の自分があの頃に戻ってもまた同じようにするんだろうなとは思いますけどね。

髙﨑:
僕もいま、ちょっとずつ組織の土台をつくっているところですが、入職直後は信頼関係を築けていないし、僕の強気な性格が災いして、スタッフとぶつかることも。だから、理解を得るために“お腹を見せる”小さな努力の積み重ねを、初期段階では特に意識していました。

【髙﨑さん】

たとえば院内のイベントで盆踊りをやるとなったら、企画段階から率先して入って、練習にも積極的に参加したり、医師を巻き込んだり。本番ではコスプレして目立ってみるとか(笑)。
ちょっとしたことだけど、今までにない雰囲気をつくって、少しずつ組織を変えていこうよ、というアピールは自分なりにしてました。そういう意味では、1年目に比べて2年目にスタッフからたくさん声をかけてもらえるようになったのは、僕にはけっこう大きな変化でしたね。

指示待ちの組織を変えた転機とは

酒井:
私にとって転機だったのは、厚労省からモデル事業のお話をいただいたことですね。うちは老健にものすごく有能な看護師長さんがいて、そのおかげで円滑に運営できていた一方、トップダウンが常態化してしまい、自分で考えられない組織になっていたんです。どうにか現場から意見を吸い上げられないか、と悩んでいた時に生産性向上の事業のお話をいただき、スタッフみんなで改善活動に取り組めました。期間内にある程度まとまった成果を出さなければいけなかったので、PDCAサイクルがなんとかクイッと回った(笑)。成果が見える化されたことでスタッフのモチベーションにもつながり、そのあたりから組織が変わってきたように感じます。

現在は、「まずは自分で考え発言してみよう」と、ボトムアップの文化を環境としてつくって、ならしている段階です。意見を言いやすい空気づくりには、仕事以外の話でコミュニケーションを深めることも大切。だからスタッフのプライベートの相談にも乗ります。みんなのお母ちゃん的な存在になれればいいなって(笑)。

【酒井さん】

髙﨑:
話すきっかけや、話しかけやすい雰囲気をつくるのは大切ですよね。僕は子どもが好きなので、法人の託児所でよく職員のお子さんに声をかけたりするんですけど、それが職員との会話の糸口にもなっています。甲さんはまだ始められたばかりだと思いますが、苦労していることはありますか?

甲:
はい、私はまだこれから、という感じですが…。やっぱり、視点の違う相手に対してどうマネジメントするかという難しさはありますね。私は当然こうするものだと思っているけど、スタッフにとっては必ずしもそうじゃないんだなと感じる場面がけっこうあって。たとえば郵便物への対応ひとつとっても、そのまま全て私の机に置くのか、ある程度仕分けてから置くのか人によって受け止め方は違います。具体的な作業内容やこちらの意図をきちんと言語化して伝えることを意識しています。平日不在にしている分、目線合わせの必要性は感じますね。

「会社員」と「事務長」。パラレルキャリアで得た視点

──甲さんは週末限定の事務長とのことですが、主にどんな業務を担当されているんですか。

甲:
私はクリニックに出勤するのが週末のみなのですが、主な業務としては経営面の戦略立案からレセプトなどの医事業務、またスタッフのシフト管理といった総務的な仕事も含め担当しています。

【甲(かぶと)さん】

髙﨑:
平日は会社員をされているんですよね。一般企業での経験も、事務長職に活きそう。

甲:
一般企業での経験や知識が直接役立つこともありますが、それ以外に、ものの見方が活かされているかもしれません。医療業界と一般企業で「当たり前なこと」が結構違うので、医療業界での当たり前を疑えるというか、そうした視点の違いを活かして業務改善に取り組むこともできているようにも思います。

それから私の場合、薬剤師でもあるので、医療についての基礎的な知識も医師と話すときに役立っています。事務長は医療業界の内側と外側、どちらの知見も活かせるんじゃないかな。加藤さんは、この中では事務長歴が一番長いですが、現在はどんなことに注力されているんですか。

スタッフの心を動かす

加藤:
私がいま、特に力を入れているのは教育・人材育成ですね。入職当初は進めなければならない事柄があまりに多かったので、反対する人がいようがいまいが、変革へのスピード感を優先せざるを得ませんでした。だから自分で考えて決めて、とトップダウンが多かったけど、現在はできる限り他のメンバーに任せて、ボトムアップで意見を吸い上げていくよう意識しています。

【加藤さん】

あとは、スタッフの満足度向上。患者さんの満足度を高めるには、スタッフのパフォーマンスを高める必要があります。そのためには、スタッフが「この病院が好き」「この病院で働けてよかった」と思えるかが大切です。現在、半年ごとに職員へ満足度調査のアンケートを実施し、結果も公表した上で改善活動を行ったりして、PDCAサイクルを回しているところです。

注力しているのは人に関する部分ですが、当院のような100床未満の小病院では、事務長がなんでもやりますよ。

酒井:
うちも、加藤さん同様、設備の不具合チェックなどこまごましたことから、戦略立案や経営面での意思決定まで含めて事務長の仕事ですね。私が意識しているのは、できる限り現場に寄り添うこと、いかに現場の方々に心を動かしてもらうかということかな。地道な作業も率先してやる。たとえば重い荷物を進んで持つとか(笑)。現場を知るため、入職直後には介護職員の初任者研修も受講しました。私は畑違いの業界からいきなり後継ぎとして入ったので…。現場経験などが不足している中、上から目線で指示したら皆さんの心に響かないでしょう。高崎さんのところはどうですか?

髙﨑:
当法人は創業50年以上の歴史がある一方で、組織づくりの面でまだこれから、という部分もあって。建物の整備などハード面から、諸手続きのフロー構築や経営改善といった体制づくりまで、一通り整備・改善を完了させることが、いまの自分のミッションです。加藤さんみたいに、今後は人材育成も着手しなくては…と思いますが、組織のフェーズに応じて求められることは変わるので、優先順位を見定めつつ、一歩一歩進めていきたいですね。

<取材:原田祐貴、写真:塚田大輔、文:角田歩樹>

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