一般企業などでは既に適応され始めている、時間外労働の上限規制。これは医師も例外ではありません。厚生労働省は医師の時間外労働についても上限を定め、2024年度以降の適応を目指し働き方改革を推し進めようとしています。当事者である医師たちは、働き方改革をどのように受け止めているのでしょうか?編集部では、m3.com会員を対象に医師の働き方改革に関するアンケートを実施。医師1213名の回答から、複雑な心境が見えてきました。
目次
医師の働き方改革、約半数が肯定するも…?
そもそも、医師は国が働き方改革を推進しようとしていることをどのように考えているのでしょうか。「医師の働き方改革に対して、どのような印象をお持ちですか。」という質問に対し、アンケートでは「かなり肯定的」「やや肯定的」と好意的な反応が約半数を占め、「かなり否定的」「やや否定的」と回答したのは1割強に留まりました(図1)。一方で、3人に1人の医師は「どちらとも言えない」と答えており、まだ働き方改革について評価しかねている現状が読みとれます。
さらに年代別の傾向をみてみると、特に20・30代の若手医師は働き方改革について肯定的な傾向にあるようです(図2)。一方で、40代以降は年齢層が上がるにつれ働き方改革に対し懐疑的な医師の割合が大きくなっています。現時点では、世代によって働き方改革に対する捉え方に大きな温度差があるようです。
公私の両立は歓迎する一方、減収・負担増への懸念も
そのような印象を持った理由について聞いたところ、“肯定派”では「仕事とプライベートの両立がしやすくなる」がダントツの1位、次いで「健康的な生活になる・睡眠不足が解消される」が2位となりました。自身の私生活・健康を犠牲にしなければならないような勤務状況に対して、不満・疑問を感じている医師は少なくないのでしょう。一方で、“否定派”では「仕事のレベル・質が落ちる」が最多となりました。
こちらも年代別の傾向を見てみましょう(図4・5)。20代では「自分の仕事の負担が減る」と回答した割合が高いのとは対照的に、特に40・50代は「自分の仕事が増える」とネガティブな反応が多くなっています。また、60代以上では「患者サービスの低下」を懸念する声が、他の年代と比べて特に多いようです。
さらに30・40代では、減収を危惧する声が比較的多いことがわかりました。ライフイベントの重なる年代でありながら、時間外労働が規制されることで、残業対やアルバイトなどの収入が減るためでしょう。
最後に、アンケート内で上がっていた「医師の働き方改革」に対する率直な意見を一部ご紹介します。
肯定派
- 人間的生活をすることで人間が診れる
- 無駄仕事が減るきっかけになればいいと思う
- 今の現状は正直おかしすぎる。みなが激務だから当然働けというのは思考放棄である
- 確かに医療を取り巻く状況は変わってきている。昔のパラメヂカルの医療行為が認められてきている。医師とは何かを考え直す必要がある。
- 時間に関してまだまだだらしなく働く医師が多い。会議なども時間外に開催することに疑問を持たない幹部が多過ぎる
- 急性期だからとか研修病院とかの縛りをなくして労働基準監督署が、労働法違反として院長・開設者の国、県、地方公共団体首長をバンバン逮捕して、割増賃金を完全に払わせないとだめ
- 無理とは思うが頑張ってほしい
- 医師の負担を減らす工夫が法制度の改革を含めてさらに必要
- 肯定的に考えているが、「そんな甘い了見で医者が務まるか!」といった伝統的な考えをどう変えていくかが課題か
- 改革をすすめないと、病院で働く医師が少なくなり開業医ばかりになる
- これまでの仕事量が多すぎ。特に書類業務が多すぎる。資格を持った事務処理員を医師1人に1人つけて欲しい。海外の医師が書類やカルテ記載をしている場面をほとんど見ない
- 休日を無理やりとらされますが意外と他の勤務日に影響なくできている気がします
- 患者サービスの低下につながる可能性があるが、現状一個人のやる気によりなんとか成立している状況である。他職種の働き方改革が進んでいる状況で、医師のみ今まで通りとなると軋轢を生む可能性が高い
- 女医さんが増え、女医さんが働きやすい環境を作れば必然的に労務管理も改善するであろう
- ありがたい。最近は定時に帰れます
懐疑派
- 制限は必要だが、研鑽機会が減るのは問題だとおもう
- 一人前に仕事が出来るようになれば、働き方改革もいいだろうが、それまではしゃにむに働いて知識と経験を増やさないと、結局一生損をするのは自分である
- 下の医師が早く帰れるようになったが、その分成長がおそい
- 正直、負担がふえるし、給与も減るし迷惑極まりない
- 大都市圏では機能的と思いますが、地方特にど田舎では、そういう勤務をすると医師がまったく不足してしまう
- 必須だと思うが、安全な医療のためには、医療機関の集約、人員の集約と、医師の収入削減が必要(週4勤務で800万など)が必要
- 現状のままでは負担が増えるだけ
- 休みがとりやすいのはいいが、残った人員の配置が難しい
- 医師以外のコメディカルの負担が増えると意味がないので、難しい問題です
- 労働環境と人的資源の補填がないまま、帳面上の労働時間をなんとか制限しろと現場に強要するだけで、何も解決に向かわない。まずは、今働いた分の賃金支払いをして、人を補填しないと無理だと認識すべき
- 結局仕事が減らないのに、超勤申請が出来ないのでサービス残業(タダ働き)になる
- 人手を増やしてからにして下さい
- うわべだけの改革では意味がない。本当に医師の働き方改革をしたいならば、診療報酬の見直しなどにより、人件費を充実させることができるようにするべきと思う
- 自分は今のままで十分
- 医師だけでは実現不可能。患者側の意識改革、病院の経営の改革がなければ、所詮かけ声だけです
- サラリーマンや公務員とは、医療従事者は働くことの意義が違う。自己犠牲・患者さん・病気の人間が中心に時間制限が決められる
- ある程度は時間に縛られずに患者のために奉仕する時間も忘れないでもらいたい
- 医師は忙しくて当たり前。人の命を預かる職業の働き方にゆとりとか必要ない。患者の立場になってみたら、24時間365日患者の事を考える医師であってほしいはず。医師は誰にも感謝されること無く、自分の人生と命を患者さん達に120%捧げるつもりでなる仕事だから。私は27年間ほぼ休んでません
- 赤ひげ先生を礼賛してきた日本社会が受け入れるのか。患者を診るならば、何かあれば24時間いつでも駆けつけよと刷り込まれてきた世代としては後戻り困難
- 結局誰かが頑張ることになる。管理職は評価されない。センター長は掛け声だけかけて17時に帰ってしまうがわれわれは22時くらいまで働いている
- 代休や勤務時間の徹底は一番に初期研修医、二番目が後期研修医、40代以上は彼らを帰すために業務は増えて、時間外実労働は増加、書類上に時間外の抑制のみが機能している。40代以上の勤務状況は働き方改革で急速に悪化し、時間外手当は抑制された
- 外科系は緊急手術等対応があり、科の医師数を増やさない限り時間外は減らないと思います
- 多忙さ、一人当たりの責任感など診療科の格差が大きいので、単純な時間だけでなく相応の収入で差をつけることも必要。
肯定派も懐疑派も、賛否の入り混じった複雑な心境のにじむコメントが散見されました。ご自身の勤務先の働き方改革に対するご意見はいかがでしょうか。ぜひこの機会に考えてみていただければ幸いです。
【調査概要】
医師の働き方改革に関するアンケート調査:2020年11月18日~26日、m3.com医師会員を対象に実施。
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