DPC制度の改正点を取り上げてまいりましたが、機能評価係数Ⅱの改定部分から、今回は保険診療係数の見直しを解説します。
保険診療係数で進む「適切なDPCデータ」作り
この保険診療係数の基本軸は「DPC調査データの質と医療の透明性、そして保険診療と医療の質的向上等を目指すこと」にあります。医療の質や保険診療に関わる改定は2018年以降に検討される予定で、今後、何が出てくるのか分からない係数と言えます。
この係数には「保険診療の理解を求める」という視点もあり、例えば「未コード化傷病名」の発生割合をペナルティーとしてマイナス評価する考え方は、診療報酬の審査の領域までをカバーしているようにも見えます。できればそうした保険請求の適切さを求める部分は、査定・返戻、指導・監査の領域に留めてほしいと思うのは筆者だけでしょうか。しかし、DPCデータの有用性を考えれば、適切なデータ作りに重きをおくことも当然と言えます。
今回の改定では、このデータ精度が厳格化されています。様式1の「部位不明・詳細不明コード」は、ICD-10コード発生割合が20%未満から10%未満に絞られ、傷病名コードが無い傷病名の登録を指す「未コード化傷病名」の割合は20%未満から2%未満にすることを課しました。様式間の有無の登録の不整合(矛盾)は現行の通り1%未満に抑えることになります。
ここで、DPCデータ作成の担当者において留意すべき点を挙げておきます。特に傷病名は、2018年度からICD-10の2013年版が標準的な病名マスターとして適用されてきます。各ベンダーからの対応の連絡がすでに入っていることと思いますが、ICDコードが細分化される部分については、標準病名とICDとのコーディング上のマッチングに対する注意が必要です。
基準値が厳しくなった関係で、気が付いたら部位不明・詳細不明コードがオーバーしていたということもあり得ますし、病名マスターの3ヶ月毎の更新にも気を配らなければ、廃止病名によって、未コード化傷病名が増えていることも、しばしば見られます。この点は診療情報管理士が熟知している部分ですので、診療情報管理部門の担当者に任せてもいいと思います。
「Ⅰ群とⅡ群の体制」評価を刷新
さて、この他には、これまであった「Ⅰ群とⅡ群の体制」評価が刷新されます。
具体的には、機能の低い大学病院本院をマイナス評価する「機能の高い分院を持つⅠ群」と「Ⅱ群の要件を満たさないⅠ群」は廃止します。さらに、精神科の診療実績は廃止して機能評価係数Ⅱ(地域医療係数)の精神科機能の実績で評価するように見直されています。
大学病院の本院とは、特定機能病院を指しますので、多様な患者像を抱えながら高度急性期を展開する中で、それほど効率的に診療体制を特化できない現実、そして一部には、収益面で一定量の病床数を抱える必要があることなど、一般急性期とは異なることを考慮したのではないかと筆者は考えます。
さて、次回は「地域医療係数」について詳しく見ていきます。
【vol.27】地域医療係数とは?整理された体制評価指数への考え方【DPC改定2018(5)】≫≫
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国立研究開発法人 国立国際医療研究センター医事管理課長/診療情報管理室長、国際医療福祉大学院 診療情報管理学修士。1987年、財団法人癌研究会附属病院に入職後、大学病院や民間病院グループを経て現職。その間、診療情報管理士、診療情報管理士指導者などを取得。現在、日本診療情報管理士会副会長、日本診療情報管理学会理事、医師事務作業補助者コース小委員会 委員長などを務める。
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